(岐阜県森林研究所) 片桐 奈々
森林のたより 2021年8月号掲載
ヒノキ根株腐朽被害は、木材腐朽菌が生立木に感染することで根株部分が腐朽する被害です。本誌811号では、県内各地の被害実態を調査して被害発生状況と対策について紹介しました。今回はその調査で明らかになった県内の被害の特徴を紹介します。
これまで他県では、ヒノキ根株腐朽被害は、主に根の傷から菌が侵入すると考えられていました。ところが今回の県内調査で病原菌の侵入口を調べてみると、岐阜県では被害木の約7割が、地際の樹幹傷から菌が侵入していました(図1左)。残りの3割は侵入口をはっきりと特定できず、根等から侵入したと考えられました(図1右)。菌の侵入口となった地際の樹幹傷には、昆虫の食痕、シカやクマによる?皮傷、落石傷、原因が特定できない傷がありました。また、これらの樹幹傷ができると、7割以上で腐朽被害が発生することがわかりました。
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図1. ヒノキ根株腐朽被害 左:菌の侵入口が樹幹傷の腐朽被害右:侵入口が不明な腐朽被害(根等が考えられる) |
今回の結果から、新たな樹幹傷を防げば、被害を予防できると考えられます。間伐等の施業の際、残存木を傷つけないよう伐採・搬出作業を丁寧に行う必要があります。また、シカやクマが多い地域では、獣害防止対策を実施することが、ヒノキ根株腐朽被害の予防につながる可能性があります(図2)。
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図2. シカの剥皮傷が侵入口となった腐朽被害 |