岐阜県におけるヒノキ根株腐朽被害の実態

(岐阜県森林研究所) 片桐 奈々



ヒノキ根株腐朽被害について

ヒノキ根株腐朽被害とは、木材腐朽菌が根の傷や地際の樹幹傷から侵入し、根株部分を腐朽させる被害です。この被害によってヒノキ本体は枯死しませんが、放置しておくと樹体内で腐朽部分が徐々に広がり、木材の利用価値が低下します。 そのため被害が見つかった場合、早期の対策が非常に重要になります。昨年の本誌797号において、岐阜県の多くの場所で被害が発生していることを紹介しました。今回はその後、さらに調査を進め、県内の被害実態を明らかにしましたのでご紹介します。

岐阜県におけるヒノキ根株腐朽被害の発生状況

偏りがないよう県内各地86林分を調査した結果、ほとんどで被害が発生していました。ただし、確認された被害木のほとんどは、幹の断面積の3分の1未満の腐朽(図1左)で、「軽度」といえるものでした。 一方、断面積の3分の1を超える深刻な腐朽被害(図1右)はごくわずかでしたが、建築用材としての価値が低下するだけでなく、風倒被害の危険性も高くなります。

     
図1 ヒノキ根株腐朽被害の深刻さの違い
図1 ヒノキ根株腐朽被害の深刻さの違い
左が軽度、右が深刻と考えられる被害

ヒノキ根株腐朽被害の対策に向けて

前述のとおり、現状のまま放置すると、被害木の腐朽はどんどん進んでいきます。このため早期に被害木を発見し、伐採を行う必要があります。
  今回の調査で確認された被害木は、多くの場合、地際の樹幹傷から病原菌が侵入していました(図2)。外観を観察し、樹幹傷があれば腐朽被害が発生している可能性は高いと考えられます。   樹幹傷の有無を指標に間伐木を選ぶことで、被害による損失を可能な限り少なくすることができると考えます。

     
図2 地際の樹幹傷由来の腐朽被害
図2 地際の樹幹傷由来の腐朽被害
巻き込んでいる地際の傷から病原菌が侵入したと考えられる。