コウヨウザン植栽の注意点

(岐阜県森林研究所) 大洞 智宏



はじめに

本誌789号(2019年6月)で、早生樹として期待されるコウヨウザンについて紹介しました。その後、岐阜県各地の植栽木を継続的に調査していますので、今号では県内の生育状況と植栽時の注意点を紹介したいと思います。

気候条件に注意

岐阜県内においても、コウヨウザンは昔から寺社等に単木的に植栽されてきました。例えば、揖斐郡池田町の禅蔵寺の個体(図1)は、町の天然記念物に指定されています。また、旧高富町史(昭和55年発行)には御鉾神社にある個体について町内の特殊植物として紹介されています。 過去に植栽されたコウヨウザンは、現在把握しているだけでも県内に10カ所以上あります。これらの植栽地は789号で紹介したコウヨウザンの生育に適した気候の地域とほぼ一致しました(図2)。

        
図1 禅蔵寺のコウヨウザン図2 コウヨウザン植栽地
図1 禅蔵寺のコウヨウザン 図2 コウヨウザン植栽地

立地条件に注意

では、木材資源としての利用を前提とした林としてはどのような成長をするのでしょうか。このことを検証するために、現在9カ所の植栽試験地を設定しています(図2)。 このうち3年前に植栽を行った4カ所の樹高成長を比較すると、概ね順調に生育しているようですが、場所によって約1mの差がついていることがわかりました(図3)。 このことは、スギやヒノキと同じように早生樹であっても立地条件によって成長が大きく異なることを示しており、植栽場所を慎重に選ぶ必要があります。

     
図3 3年間の樹高成長
図3 3年間の樹高成長

獣害に注意

他県の植栽地ではノウサギによる食害が多く報告されています。岐阜県でも被害率が9割を超える調査地がありました。また、ヒノキと混植した調査地では、ヒノキの被害率が1割未満であったのに対してコウヨウザンでは6割を超える被害率でした(図4)。 ノウサギはコウヨウザンを好んで食べる傾向があるため、植栽する場合、ツリーシェルターを設置するなど防除の手立てが必要になります。

     
図4 ノウサギによる被害
図4 ノウサギによる被害

おわりに

植栽試験が始まったばかりで成長速度や耐雪性など解明すべき点は多いですが、コウヨウザンの特性を十分に生かすためには、植栽地選びや獣害対策をしっかり行う必要があると言えます。