間伐が森林の水源かん養機能に及ぼす効果の検証(その2)

(岐阜県森林研究所) 久田 善純



はじめに

森林研究所では、間伐の実施が森林の「水源かん養機能」にどのような効果を及ぼすのか検証する取り組みを、県内のヒノキ主体の小流域(表参照)を対象に行っています。以前にも当コーナー記事(森林のたよりNo.769,2017年10月号)にて、ヒノキの樹冠部を通り抜けて地面にまで到達する雨量(林地正味雨量)の違いについて紹介しました。 間伐した流域と無間伐のままの流域のそれぞれ代表的な林相の箇所に設けた調査区(以下、「間伐区」、「無間伐区」という)では、間伐区の方が無間伐区よりも林地正味雨量が多く、間伐後4年が経過した現在でも、未だその傾向が続いています。

土壌水分率の違いについて

今回は、土壌水分の計測状況について紹介します。計測は、林内の雨量調査と同じ調査区内の林床に土壌水分センサーを設置(深さは地表面下5cm)し、土壌水分率(体積水分率)の推移を1時間ごとに記録しています(写真)。
           
写真左 間伐区写真右 無間伐区
写真 土壌水分率の計測のようす (左:間伐区,右:無間伐区)
     
表 比較する2つの小流域の概要(白川町内)
表 比較する2つの小流域の概要(白川町内)

降雨が断続的にある場合や冬季においては、両区の土壌水分率の推移に際立った違いはありません。しかし、夏季に無降雨・少雨の状態が長期間続くような場合は、無間伐区に特徴的な動きが見られます。図(上段)は、夏季の典型的な推移の例です。間伐区では数日間降雨がなくても、ある程度一定の水分率を維持し続けています。   一方、無間伐区では降雨が無い日が長く続く(6/9〜6/20)と、降雨(6/21)があっても水分率がすぐには回復しない現象(6/22〜6/30)がありました。同様の現象は、計測を始めてから4年間の間に数回確認されています。
  この現象については、両区の下層植生の違いが原因のひとつとして考えられます。写真のように、無間伐区では下層植生が少ないのに対し、間伐区ではササや低木が繁茂しています(間伐前からササ等が少量生育していましたが、間伐後、全面に繁茂しました)。間伐区では、下層植生が土壌水分の安定的な保持に寄与し、無間伐区では、   植生が少ないために林床の乾燥が進み、土壌表面に撥水性が生じるなどして、水分を浸透・保持しにくい状態になった可能性があります。

     
図 日降水量と土壌水分率の推移の比較
図 日降水量と土壌水分率の推移の比較
(2017年5月8日〜7月2日の8週間の抽出)

今後も調査を継続し、河川流出量の推移や林地正味雨量の差などと併せて検証することにより、森林土壌の保水性(雨水を浸透させ、貯留する効果)の違いを明らかにしたいと考えています。