(岐阜県森林研究所) 大洞 智宏
森林のたより 2020年4月号掲載
ニホンジカの増加により、植栽を行う場合には獣害を防止する手立てが必要になってきました。特に、生息密度が高い地域では、柵やツリーシェルターによる物理的な防除が必要です。
一般的に柵の設置によって獣害は防げますが、雪や台風による倒木などで柵が破損した場合、シカに侵入され多くの植栽木が獣害に遭う場合があります。このため、最近はツリーシェルターのような単木保護資材を選択し面的に獣害を受けるリスクを回避しようという傾向があるようです。
現在、数種類のツリーシェルターが利用されています。例えばナイロンなどで織られた記事を筒状に加工し支柱で固定するもの(布タイプ)や、ポリプロピレンなどで作られた筒状の保護具を支柱で固定するもの(チューブタイプ)、 数センチの目あいで成形された網状のシートを筒状に設置する(網タイプ)ものなどがあります。複数のメーカーから発売されており、積雪の状況、施工性やコストなどから選択する必要があります。
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ツリーシェルター:布タイプ(左)、チューブタイプ(中)、網タイプ(右) |
ツリーシェルターは正しく設置すれば、その後獣害に遭う危険性は比較的低いと考えられます。しかし、設置した場所によっては、雪や台風によって支柱の折損やシェルターの亡失が発生する場合があるので、
特に大きな台風の後には現地の状況確認をお勧めします。また、シェルターを設置した植栽木を観察していると、設置後に確認しなければならない点や、メンテナンスが必要な点も見受けられます。実際に観察された事例では、
・シェルターを植栽木にかぶせたときに、頂端部が曲がってしまい、下向きに成長。
・つる性の植物がシェルター内で植栽木にからみ、幹に異常が発生。
・シェルター内で植栽木以外の植物が繁茂し、本来保護されるべき植栽木の成長を阻害。
・植栽木の健康状態が外からわからない。
等のことがありました。
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シダに塞がれたシェルター | 侵入したサルトリイバラ | シェルター内での幹曲がり |
柵に比べてメンテナンスが不要であるようなイメージを持たれがちなツリーシェルターですが、放置していては障害が発生していても気が付けません。
近年、植栽コストの低減のため植栽本数を少なくする傾向があります。獣害に合わないために設置したシェルターが原因で健全な植栽木を減らしてしまわないように、定期的に現地の状況を確認しに行きましょう。被害の発生や重症化を防げます。
下刈りなどの際にシェルターの中を確認してみてはどうでしょうか。