天然更新判定チェック表の作成について

(岐阜県森林研究所) 久田 善純



近年、針葉樹人工林を皆伐したあとの更新方法として、人工造林ではなく天然更新を選択する事例がみられます。

天然更新とは、自然に落ちた種から出た稚樹や、萌芽枝(伐根から新たに生えた芽)が成長して森林が育つことです。岐阜県では天然更新の成立条件を、伐採後5年経過時に「更新樹種(高木性樹種)が、高さ50cm以上かつ競合植物(更新樹種の成長を妨げる植物)の高さ以上をもって、1ha当り3千本以上成立すること」としています。

しかし、針葉樹人工林のなかには母樹(種子の供給源)となる高木性の広葉樹林から遠かったり、前生稚樹や埋土種子が少ないなど、天然更新に不利な箇所があります。

確実な更新のために

森林の多面的な機能を維持していくためには、確実な更新方法を選択することが大事です。

そこで、針葉樹人工林の伐採計画時に、あらかじめ天然更新の阻害要因の有無や更新補助作業の要否などを予測し、適切な更新作業を促すためのチェック表を試作しました。

チェック表の活用

第1チェックとして法令等を確認します。制限がある場合は天然更新を選択できません。次に、第2チェックとして現地における更新阻害要因を洗い出し、第3チェックとして阻害要因を低減する対策の計画を確認します。

実際に針葉樹人工林皆伐跡地において天然更新を試みた箇所を調査したところ、高木性樹種の侵入本数は十分あるものの、競合植物の高さを超える個体が少なく、更新補助作業の「刈り出し」が必要な事例が多く見られたことから、同作業の計画の有無を確認することは重要と思われます。

  
チェック表
チェック表

このチェック表は、森林所有者や林業事業者が伐採、更新を計画する際に、市町村担当者や県林業普及指導員と共に適切な更新方法を確認しあうツールとして活用することを期待して作成しました。特に、更新補助作業を計画することの重要性を認識していただくように構成しています。

今後、調査事例を増やし、指標となる具体的な数字を示すことができるよう検討していく計画ですので、現場で運用した際の問題点などについてご意見、ご感想をお寄せいただきますようお願いします。