コンテナ苗による下刈り軽減を考える

(岐阜県森林研究所) 渡邉 仁志



再造林を低コストかつ確実に実施するため、「初期成長に優れた」コンテナ苗に期待が寄せられています。しかし、全国一斉調査の結果、現在のコンテナ苗には、裸苗に比べ初期成長の優位性がないことが明らかになってきました。当所では育苗時の培土に混入する肥料(元肥)を工夫して苗木の品質を向上させる研究に取り組んできました。ここでは、効力の長い肥料を元肥に用いたヒノキ実生コンテナ苗による、成長促進と下刈り期間短縮の効果について報告します。

元肥を工夫した苗木の成長

育苗時の1年間と植栽後の1年間効力がある肥料を元肥にした培土で、ヒノキの1年生稚苗を育成し、2年生コンテナ苗を試作しました。

これを下呂市内の皆伐跡地に植栽して比較したところ、植栽1〜2年目のコンテナ苗の樹高成長量は、裸苗よりも高い水準でした(図1)。これは根鉢に残留した元肥の効果によるものであると考えられます。その結果、コンテナ苗の樹高は、植栽から3年後には約33cm、4年後には約40cm、裸苗を上回っており、かつ両苗間の樹高差は小さくなりませんでした。

  
図1 苗種別の年樹高成長量
図1 苗種別の年樹高成長量

下刈り期間への影響

植栽当年から下刈りを4年間行った結果、この造林地の主な雑草木はススキ(平均草丈160cm)と落葉低木のトサミズキ(平均樹高150cm)になりました。5年目夏期に雑草木との競合状態を調査すると、被圧された苗木は、コンテナ苗区(平均樹高257cm)、裸苗区(同219cm)ともほとんどありませんでした。このことから、5年目の下刈りは両区とも必要ないと判断できます。

雑草木の構成(種類や量)が5年目と同じだったとして、4年目の状態を推定しました。裸苗区(平均樹高154cm)では、雑草木に被圧された苗木が65%に達していた(図2a)ことから、4年目の下刈りは必要だったと考えられます。一方、コンテナ苗区(平均樹高187cm)では、被圧された苗木の割合が低く(図2a)、それを被圧している雑草木に高木性種がほとんどなかった(図2b)ため、4年目の下刈りを省略できた可能性がありました。

つまり、この造林地では、元肥を工夫したヒノキ・コンテナ苗によって、下刈り期間を1年間短くすることができた可能性があります。

  
図2 苗木と雑草木の競合状態(a)および雑草木の構成(b)
図2 苗木と雑草木の競合状態(a)および雑草木の構成(b)

今後は、育苗時における更に効果の高い施肥条件を検討する必要があります。また、雑草木の構成により苗木への影響が違ってきます。雑草木のタイプ分類と、それに合わせた下刈りスケジュールの検討が必要です。