青色光でシイタケの害虫を防除する

(岐阜県森林研究所) 大橋 章博



はじめに

シイタケの菌床栽培では近年、栽培施設内でキノコバエ類が多数発生する事例が増加しています。これは、作業の省力化を図るために栽培方式が変化したことで、キノコバエ類が増殖しやすい環境に変わったためと考えられます。キノコバエ類による被害としては、幼虫が菌糸や子実体を食害することによる収量の低下と幼虫が付着した子実体の流通による異物混入が大きな問題となっています。とりわけ、シイタケのパック商品へのキノコバエの混入は、岐阜県産シイタケのブランドイメージの失墜につながる恐れがあります。
  現在、防除対策として、光で誘引捕殺する方法や、粘着シートで捕殺する方法が行われていますが、十分な防除効果は得られていません。また、菌床栽培で使える農薬はないことや、商品の特性から農薬の使用を避けたい事情もあり、化学農薬を使わない安全な防除技術の開発が求められています。
  そんな中、青色光を昆虫に照射すると殺虫できるという画期的な発見がありました。この研究では、昆虫の種類によって殺虫に有効な光の波長や強さは異なることが明らかにされています。
  そこで、青色光を使ってキノコバエ類を防除することを目指して研究を始めました。今回はその研究の一部を紹介します。

      
(参考)光の波長
(参考)光の波長

殺虫に有効な波長は?

先ずは、シイタケ栽培で最も大きな被害をもたらすナガマドキノコバエ(図1。以下、ナガマド)に対して、どの波長で殺虫できるか検討しました。
試験には375〜490nmにピーク波長をもつ6種類のLED球を使い、7日間連続してナガマドの幼虫に照射しました(図2)。

図1 ナガマドキノコバエ 図2 青色光の照射試験
図1 ナガマドキノコバエ 図2 青色光の照射試験

その結果、光強度が強ければ、いずれの波長でも幼虫を80%以上殺虫できることが確認できました(図3右)。光強度が弱いと死亡率は低下し、波長によって効果に差がみられました(図3左)。今回の結果からは375nm辺りの波長が有効と考えられました。

  
図3 光強度を変えた際の各波長光照射の殺虫効果
図3 光強度を変えた際の各波長光照射の殺虫効果

おわりに

今後は、光強度と照射時間が殺虫効果に及ぼす影響について検討するとともに、菌床に生息する幼虫にどのように照射すれば効果的であるか検討していく予定です。
  シイタケ栽培ではナガマドの他にも害虫が発生します。これらの虫についても殺虫に有効な波長を明らかにできれば、複数の波長の青色光を照射するだけで、シイタケ害虫全てに有効な防除技術となる可能性を秘めています。