ヒノキ・コンテナ苗の通年植栽を考える

(岐阜県森林研究所) 渡邉仁志



再造林を低コストかつ確実に実施するため、近年,コンテナ苗の利用が進められています。コンテナ苗は「通年植栽が可能で、初期成長が早い」ため、伐採から植栽までを連続して行う一貫作業と下刈り回数の低減によって、保育費用の圧縮が期待されているからです。しかし、岐阜県に多い急傾斜やヒノキの特性を踏まえた検証は、十分ではありません。

岐阜県では、現在コンテナ苗の検証を進めています。これまでにも、育成条件の工夫により、初期成長が早いヒノキ・コンテナ苗を育成できることを紹介しました(本誌755号)。ここでは、「植栽時期を選ばない」というコンテナ苗のもうひとつの特性を考えてみました。

コンテナ苗の通年植栽

通年植栽ができるかどうかは、苗木の活着率と成長経過を評価すれば分かります。そこで、25〜31ヶ月間育成したヒノキのコンテナ苗を、春(植栽適期)、夏、晩秋の3回、下呂市金山町の皆伐跡地へ植栽し、3年間の経過を調べました。すると、どの時期に植栽したコンテナ苗も8割以上が活着し、比較用に植栽した春植え裸苗以上の成績でした。

しかし、夏植えと晩秋植えのコンテナ苗は、春植えのコンテナ苗より植栽時の樹高が大きかったにもかかわらず、生育期間が短かった植栽当年だけでなく、2年目にもほとんど伸長しませんでした(図1a)。つまり、今回の山出し方法では、成長低下の影響が長く続くため、下刈り軽減という目的を重視するならば、植栽時期は春に限定されます。

苗木の成長に影響する要因

実は、夏植えや晩秋植えのコンテナ苗は、春植え用の苗木を試験的にそれぞれの植栽時期まで残しておいたもので、コンテナの中で徒長していました。これらの苗木はまず肥大成長を優先させ、比較苗高(苗木の高さと太さのバランス)を低下させたあと(図1b)、植栽3年目になってようやく伸長しはじめました(図1a)。このことから、苗木を速やかに大きくするには、比較苗高の低い苗木を植栽しなければならないといえます。

しかし、苗木の生産現場は、春植えにあわせたスケジュールでコンテナ苗を生産しているため、春以外に植栽する場合、春植え用の苗木を残しておく(今回の状態)か、翌春に植栽予定の苗木を前倒しして使うしかありません。今後、品質の高い苗木をいつでも植えられるようにするには、それぞれの植栽時期に苗木が適切な形状になるよう、播種・移植の時期や管理方法を最適化した生産体制が求められます。

これまでの研究で強く感じるのは、コンテナ苗を用いた低コスト再造林を実現するためには、目的にあわせて「どんな」コンテナ苗を作り、植えるのかをしっかり考えることが重要だということです。そのためには、種苗生産を担う方と植栽・保育作業を担う方が、今まで以上に情報交流することが必要だと思います。

図1 苗木の植栽時および植栽1〜3年目期末の樹高,比較苗高
図1 苗木の植栽時および植栽1〜3年目期末の樹高,比較苗高