間伐が森林の水源かん養機能に及ぼす効果の検証に取り組んでいます

(岐阜県森林研究所) 久田 善純



森林の土壌は、浸透性、保水性に優れ、雨水を貯留して長時間かけて川に流出させるので、川の流量が安定し、洪水、渇水が緩和されます。これを、森林の「水源かん養機能」といいます。

【森林に降った雨水の流れ方】

図1は、森林における雨水の流れ(水収支)を示したものです。森林に降った雨(全降水量(1))は、雨滴として地面に直接到達する林内雨量(2)と、樹木の枝葉に付着する分に分かれます。枝葉に付着した雨のうち、一部は幹を伝って地面に到達する樹幹流下量(3)となり、残りは蒸発(4)します。

地面に到達した雨水(2)(3)には、土壌に浸透する分と、浸透しない分があります。土壌に浸透した雨水は、一部が土壌表面から蒸発(5)したり、植物を通して蒸散(6)され、残りは森林土壌中に貯留(7)されます。土壌に浸透しなかった雨水は地表流(8)となって短時間で渓流に流れ込みます。

森林が水源かん養機能を発揮するためには、地面に到達した雨水(2)(3)が、地表流(8)とならずに、森林土壌中に浸透・貯留(7)され、時間をかけて流出することが重要です。   
図1.水収支の模式図
図1.水収支の模式図

【間伐の効果を検証】

手入れ不足の人工林では、水源かん養機能の低下が懸念されます。林冠がうっ閉=i枝葉が重なって隙間がない状態)していると、雨水が遮られて地面に到達する量が減少します。また、地面に光が届かず下層植生が育たないので、地表流や表土流亡が起きやすくなります。このような人工林に対して、間伐等の適切な手入れを行うと、林内雨量の増加、下層植生の回復等を通じて、水源かん養機能の維持増進に効果があると考えられます。

この効果を検証するため、隣接する2つの流域(約50年生ヒノキ主体の林分)を対象に調査を行っています。両流域ともに10年以上間伐されていませんでしたが、平成28年に片方の流域のみ30%の間伐を行い、「間伐流域」と「無間伐流域」に分け、雨水の動態を比較しています(写真)。

現時点までの調査結果(暫定値)では、地面に到達する雨水の量(2)(3)は、無間伐流域よりも間伐流域の方が多い傾向がありました(図2)。

今後はさらに、流量も踏まえた流域全体の水収支や、土壌の保水性について比較する必要があります。また、これらの結果は、降水量、気温、湿度、日照時間等の気象条件に左右され、年ごとの変動も大きいので、正確な検証のために、今後、長期間のモニタリングが必要です。

  
写真.調査の様子(間伐流域) 図2.地面に到達した雨水の量(暫定値)
写真.調査の様子(間伐流域)
(左:樹幹流下量、右:林内雨量の測定)
図2.地面に到達した雨水の量(暫定値)
((2)林内雨量+(3)樹幹流下量)(1m2当り)