(岐阜県森林研究所) 片桐 奈々
森林のたより 2016年5月号掲載
近年、岐阜県で大問題となったマイマイガの大発生は平成27年に終息しました。しかし、今後またいつ大発生するかわからないため、油断できません。
大発生の初期に防除を行うと、その後の急激な密度の上昇を抑えられます。今後の大発生を防ぐためには、マイマイガの密度をモニタリングして大発生の予兆を察知する必要があります。現在モニタリングには、牛乳パックを使ったアメリカ製のフェロモントラップが使われていますが、捕獲効率が低く国内で入手しにくい問題があります。また、ガ類の調査に使われるトラップは捕獲効率が高いものの、コストが高いことが問題です。そこで、身近で手に入る資材を使って、低コストで捕獲効率の良いモニタリングトラップの開発を試みました。
トラップの資材は、身近で手に入る牛乳パック、ペットボトル、発泡スチロール製どんぶりを選びました。牛乳パックは内部にかえしをつけ、既存のトラップを改良しました(図1)。ペットボトルは侵入口にかえしをつけました(図1)。発泡スチロール製どんぶりには内側壁面に凹凸があり、フェロモンに惹かれたマイマイガが長時間しがみつくことができると考えられます(図1)。以上のような構造であれば、マイマイガが逃げにくいと予想しました。
そこで実験室内で、マイマイガ雄成虫を各トラップに入れて脱出するか調べると、全てのトラップで脱出する個体はいませんでした。つまり、今回考案した3種類のトラップは、マイマイガが逃げにくい構造のようでした。
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図1. 考案したフェロモントラップ |
今回考案したトラップの捕獲効率は、既存のトラップと同等、もしくはそれ以上が求められます。そこで、考案したトラップ3種類と、汎用トラップである粘着トラップとファネルトラップ(図2)の野外での捕獲効率を調べ、比較しました。
マイマイガが一昨年大発生した広葉樹林で、5種類のトラップを設置し、マイマイガの捕獲頭数を調査しましたが、ほとんど捕獲されませんでした。これは、岐阜県内でマイマイガの大発生が終息したためと考えられます。残念ながら今回は、考案したトラップの野外における捕獲効率を検証できませんでした。
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図2. 既存のフェロモンとラップ |
野外実験を行い、わかったことがあります。まずトラップの耐久性です。ペットボトル、どんぶりは大丈夫でしたが、牛乳パックトラップは雨風により2ヵ月で型崩れしました。これでは頻繁にトラップを作り直す手間がかかります。次にトラップの製作コストです。今回考案したトラップは全て、コストをファネルトラップの1/5、粘着トラップの1/2に抑えられました。以上のことから、トラップの資材として牛乳パックは不適なこと、考案したトラップにより、身近な資材を使い低コストでマイマイガをモニタリングできる可能性が明らかになりました。
マイマイガの大発生が終息したため、現時点では野外での検証は難しいかもしれません。このため、今後は人工飼育したマイマイガを用いて、室内実験で考案トラップの捕獲効率を検証していきたいと考えています。