ツリーシェルターの耐雪性
―最深雪積深150cmの地域において―

(岐阜県森林研究所) 岡本 卓也



○はじめに

ニホンジカが植栽木の枝葉を採食し,成長や形状に大きな影響を及ぼすことがあります。対策として植栽木に薬剤を塗布する方法や,植栽木を保護資材で覆う方法(ツリーシェルター)などがあります。

ツリーシェルターは,保護資材により周囲と植栽木を隔てるため,高い採食防止効果があります。しかし,積雪時や融雪時に保護資材が変形(多くは鉛直下方向につぶれる)し,採食防止効果が発揮できなくなったり,植栽木と共に倒伏し植栽木に損傷を与えたりすることがあります。

  
採食され矮小(盆栽)化したヒノキ
採食され矮小(盆栽)化したヒノキ

そのため,ツリーシェルターにより採食対策を実施するには,積雪量などの条件を考慮に入れ,慎重に使用する資材を選択する必要があります。しかし,現状では選択に必要な情報は多くありません。そこで,最深雪積が150cm程度(ツリーシェルターとほぼ同じ高さ)の地域において,融雪後のツリーシェルターの破損状況などについて調査を実施したので結果を報告します。

 
資材名ABCDE
支柱屈曲性
保護資材自立性
表面平滑メッシュ平滑平滑ネット

○使用可能条件は?

5種類の市販ツリーシェルター(写真と表を参照)を,樹下植栽を想定し,44年生ヒノキ林内(傾斜30°,立木密度1100本/ha)に設置し,融雪後の破損や倒伏の状況を確認しました。

その結果は次のとおりでした。

破損などは確認されませんでした。これは,支柱の屈曲性が低いことに加え,保護資材に厚みがあり自立するため,ツリーシェルター全体として強度が高かったためと考えられました。

支柱と保護資材の結合部分の破損がみられ,保護資材が変形しました。これは保護資材がメッシュ状であり,着雪が多かったためと考えられました。

  
破損状況(B)
破損状況(B)
  
変形状況(B)
変形状況(B)

保護資材に変形がみられました。これは保護資材が薄く自立しないため,雪に引っ張られる力が大きくかかったためと考えられました。

  
変形状況(D) 変形状況(E)
変形状況(D) 変形状況(E)

以上の結果から,最深雪積150cm程度で傾斜のある森林において,冬期も破損せずに使用できるツリーシェルターの条件は,次のとおりでした。

  1. 支柱が曲りにくい
  2. 保護資材に自立性がある
  3. 保護資材の表面が平滑

○おわりに

今回は1冬期における結果であるため,2年目以降の破損状況などについても継続して調査していく必要があります。また新規の植栽を想定した,上層木がない環境における破損状況などについても整理していく必要があります。

今後は調査事例を増やし,様々な条件下で最も効果的なツリーシェルターについて明らかにしたいと考えています。