スギ・ヒノキの間伐で発生する部位別のバイオマス量

(岐阜県森林研究所) 古川邦明



はじめに

森林研究所では未利用材の利用を進めるため、数年前から端材や枝条等のいわゆる未利用材の発生量や、その収集運搬コストについて調査を行っています。調査結果は、これまでに何回か本誌や森林研情報などで報告しましたが、その後も未利用材の発生量について調査を継続しています。

今回新たに得たデータを加え、実際に利用可能な全木集材・造材で発生するバイオマスについて、胸高直径から部位ごとの発生量を推定できないか、改めて検討しなおしました。その結果を報告します。

調査の方法

県内各地で、スイングヤーダなどで全木集材したスギとヒノキの間伐材を調査対象としました。1本毎に胸高直径と樹高を測定し、作業道上でプロセッサを使い、通常の採材基準で造材しました。1本造材が終わるごとに、@枝条(葉を含む)、A端材(曲材、梢端材など)、B用材に区分しそれぞれの生重量を計測しました。同時に各部位からサンプルを採取して持ち帰り、含水率を計測し、乾燥重量を求めました。

胸高直径から発生量を予測する式の検討

調査した材の胸高直径は、スギが15.5〜45.5cm,ヒノキが11.0〜39cmです。図1に胸高直径と各部位の乾燥重量の関係を散布図で示しました。

樹種毎に結果を見てみます。

@枝条 両樹種とも胸高直径と発生量の関係は,3次式(表1)で最も良く近似することができました(決定係数:スギ0.85、ヒノキ0.84)。

A端材 両樹種ともに、胸高直径と発生量に関連は認められませんでした。スギは、1本あたりの発生量は、3〜74kg/本,平均28.8kg/本、ヒノキは4〜79kg/本、平均30.9kg/本でした。

B用材 両樹種とも胸高直径と発生量の関係は、累乗式(表1)で最も良く近似することができました(決定係数:スギ0.79、ヒノキ0.83)。

おわりに

全木集材されたスギとヒノキの枝条と用材の発生量については,誤差はありますが、胸高直径から予測する推定式が得られました。一方、端材の発生量予測に使える推定式は得られませんでした。予測のためには胸高直径に加えて、曲がりや腐れなど欠点の情報が必要でしょう。

端材は、未利用材のなかで最も利用が期待されています。その発生量を少しでも精度良く予測できるようにするため、引き続き調査を進めていく予定ですので、皆様のご協力をお願いします。

表1 スギ・ヒノキの胸高直径から部位の発生量推定式
図1 樹種別胸高直径と部位別発生量(乾燥重量kg)
図1 樹種別胸高直径と部位別発生量(乾燥重量kg)