ニホンジカを数える
ライトセンサス

(岐阜県森林研究所) 岡本卓也



はじめに

野生動物の保護管理や被害対策を行う場合には、目標となる指標がなければ効果的な計画が立てられません。多くの場合、その指標として対象となる動物の生息数やその増減の傾向が用いられています。 野生動物の生息数や増減の傾向を正確に把握するのは困難ですが、推定するいくつかの方法があります。

今回は森林研究所が今年の6月より実施している、ニホンジカを対象としたライトセンサスについて紹介します。



ライトセンサスとは?

ライトセンサスとは、夜間にライトで動物を照らすと、ライトの光を反射し目が光る(写真1)ことを利用して、動物の頭数を数える調査法です。あらかじめ決めておいた調査路線を日没後に自動車で時速10〜15キロ程の速さで走行しながら、進行方向と直角を成す方向を自動車用ヘッドライトの数倍〜数十倍の明るさを持つ強力なライトで照らし、発見した動物(光った目)の数を数えていきます。同じ路線を定期的に調査することにより、その地域における対象動物の増減の傾向を把握することができます。 森林研究所では、ハンディGPS、双眼鏡,そしてわずかな明かりでも鮮明に撮影できる暗視機能(写真2)が付いたビデオカメラも併せて用い、動物の見落としや数え間違いを防ぎ、調査精度の向上を図りながら調査を行っています。

  
写真1 ライトの光を反射して光るニホンジカの目 写真2 暗視機能付きビデオカメラで撮影されたニホンジカ
写真1 ライトの光を反射して光るニホンジカの目 写真2 暗視機能付きビデオカメラで撮影されたニホンジカ

現段階での傾向は?

現在、定期的に調査を実施している地域でのニホンジカの発見数は、図のとおりです。 この地域では、6、7月とニホンジカの目撃数が増加し、8月になるといったん減少しましたが、9月から11月にかけて再び増加する傾向にありました。 ライトセンサスは長期間継続して、定期的に実施していかなければその目的を果たすことが出来ません。まだ1年目の結果であり、目撃数が変化している理由は明らかにはなっていません。 今後もライトセンサスを継続し、植生調査などの結果も併せて分析することにより、この地域におけるニホンジカの増減の傾向について、徐々に明らかにしていきたいと考えています。

図 ニホンジカの発見頭数(2011年)
図ニホンジカの発見頭数(2011年)


 

   

おわりに

森林研究所では今後、県内のいろいろな地域におけるニホンジカの増減の傾向を把握するために、ライトセンサスを実施していく予定です。 夜間に強力なライトを使用する調査であるため、実施地区の方にはご迷惑をおかけしますが、実施の際には日程などの情報提供を行っていきますので、調査へのご理解、ご協力をお願いいたします。またシカの生息情報等についてのご協力もお願いいたします。