ササ地の天然更新にササ刈り払いと地表かき起こしは有効か

(岐阜県森林研究所) 田中伸治



はじめに

材価が低迷していることから、森林の伐採後、できるだけ費用をかけないで森林を更新させる技術が求められています。その手法のひとつに天然更新があります。今回は、天然更新が難しいとされるササ地において、ササ刈り払いと地表かき起こしが有効であるか調べました。


調査区の設置

中津川市加子母のヒノキ人工林のうち、2009年の秋に間伐が行われた2林分(加子母Aと加子母B)に、地表かき起こし区(ササ刈り払い+かき起こし)、ササ刈り払い区、無処理区をそれぞれ2区ずつ設置しました(写真1〜3)。各調査区の大きさは25u(5m×5m)としました。ササ刈り払い等の処理作業から1年後の2010年の秋に、処理後に発芽した樹木の種名と本数を記録しました。

地表かき起こし区 ササ刈り払い区 無処理区
写真1 地表かき起こし区 写真2 ササ刈り払い区 写真2 無処理区


処理後に発芽した樹木の本数

各調査区において、処理後に発芽した樹木の本数をグラフに示しました(図1)。加子母Aにおいて、樹木本数は、地表かき起こし区が30本/uと最も多く、ササ刈り払い区が15本/u、無処理区が12本/uと最も少ない結果となりました。加子母Bにおいて、樹木本数は、地表かき起こし区が95本/uと最も多く、ササ刈り払い区が34本/u、無処理区が5本/uと最も少ない結果となりました。樹種は、すべての調査区でヒノキが最も多く、スギやアカマツ、ヤマウルシなどが見られました。天然更新で重要であると思われる高木性樹種の本数割合は、すべての調査区で88%以上でした。

処理後に発生した樹木本数
図1 処理後に発生した樹木本数


ササ刈り払いと地表かき起こしは有効か

天然更新が成り立つためには、できるだけ多く発芽させられるかどうかが第一歩となります。地表かき起こし区では、他の調査区よりも多く発芽しており、特に、加子母Bでは、無処理区と比べて19倍多く発芽していました。ササ刈り払い区では、無処理区よりも多く発芽していました。このことから、ササ刈り払いと地表かき起こしは、種子の発芽にとっては有効な作業であることが確認できました。今後は、発芽したもののうち、高木性の樹木が、これからどれくらい生き残って成長していくのかを継続調査していきたいと考えています。