(岐阜県森林研究所) 大橋章博
森林のたより 2009年11月号掲載
スギカミキリ(写真1)は、スギやヒノキの生立木を加害し、材質劣化を招く害虫です。1980年代にスギカミキリ被害は大きな問題となりましたが、防除対策が功を奏したのか、その後、被害はほとんど見られなくなりました。ところが最近になって、スギカミキリの被害に関する問い合わせや相談が増えています。
そこで、今回は、スギカミキリ被害の特徴や防除法について紹介します。
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道路沿いのスギやヒノキが点々と枯れている風景をよく目にします(写真2)。これらの被害の多くはスギカミキリによるものです。里山や耕作跡地の植栽地で被害が多くみられますが、奥山の造林地ではほとんど発生しません。
また、被害は10〜20年生の林分で最も多く見られます。しかし、最近では40年生以上の林でもしばしば被害が見られます。
スギカミキリの幼虫はスギやヒノキの内樹皮を食害しますが、スギでは幼虫が上下方向に食害するのに対し、ヒノキでは水平方向に食害します。このため、ヒノキの場合、1,2頭の加害でも枯死することがあります。
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原因を誤って判定すると適切な防除ができない可能性があります。以下のポイントに注意して診断しましょう。
1.樹皮に点々とヤニが出ている(写真3)。
樹幹の表面に傷や虫糞がないのにヤニが出ていたら、本種による加害の可能性が高い。
ヒノキカワモグリガの被害はよく似ていますが、枝の分岐部付近に多く見られること、虫糞が混じることから区別できます。
2.楕円形の脱出孔(長径約9mm)がみられる(写真4)。
3.樹皮にひび割れや横すじがみられる(写真5)。
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写真3 樹皮のヤニ |
写真4 楕円形の脱出孔 |
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写真5 ハチカミ症状 |
枯れた木や脱出孔がみられる木は伐倒し、NCS剤でくん蒸処理します。残りの被害木は次の間伐時に除去することとし、当面は樹幹にスミパイン乳剤などを散布して、樹皮下の幼虫を殺虫するとともに、脱出してくる成虫を駆除します。
この他に、粘着バンド(カミキリホイホイ)の巻き付けも効果があります。林分内の立木全てに巻き付けるのが望ましいのですが、被害木にバンドを巻き付けるだけでも十分効果があります。
また、被害が発生していない林分や被害を受けていない立木には、スミパイン乳剤を樹幹へ散布して被害を予防します。