作業路開設計画に活用するマップを作成しました
ホームページやGISで順次公開予定

(岐阜県森林研究所) 古川 邦明



森林研究所では、森林管理のために必要な森林情報をできるだけ判りやすい形で提供するため、冠雪害や虫害など森林被害の危険度マップを作成、公開してきました。これらは、WebGISの「ぎふフォレなび」等で公開していますので、ご覧になった方もいらっしゃるでしょう。
 これらの危険度マップの作成と並行し、作業路開設のため、地形や作業路線形計画時に注意すべき箇所などを示した作業路開設計画指針図の作成のための調査を進めてきました。その一部が完成しましたので紹介します。

【作業路開設指針図1】

●危険傾斜分布地図●
 作業路の開設は、斜面の傾斜によって構造や開設の適否を判断する必要があります。そこで、県が作成している地形データから、県内全ての森林の10m四方での平均傾斜を算出し、32度以上37度未満と37度以上となる箇所を示す地図を作製しました。これに集水面積が0.5ha以上となる谷線を重ね合わせて表示しています。谷線は、集水面積に応じて表示色と太さを変えています(図1)。

    
図1 作業路開設指針図1<危険傾斜分布地図>
図1 作業路開設指針図1<危険傾斜分布地図>
傾斜32度以上を黄色、37度以上を赤で示した。谷線は集水面積に応じて色分け表示している。

【作業路開設指針図2】

●崩壊危険斜面図、濁水要注意域図、集水面積別谷線図●
  ※指針図2は、3種類の地図で構成しています。

@崩壊危険斜面図
 県治山課が作成した、森林の崩壊危険度に基づいて、作業路開設の要注意箇所を示した地図です。崩壊危険度が高く、さらに急傾斜の場合は(図1)作業路の開設は控えるか、現地踏査を十分に行って、十分確認した上で、計画する必要があります(図2)。

A濁水要注意域図
 作業路の開設では、雨水処理に注意する必要があります。路面の水切りについては、横断溝や水切り板、のっこし等の方法がとられています。しかし、谷川に近い場合、水切り位置によっては濁った路面水が、谷川に直接流れ込み、濁水が問題となる危険性があります。谷を横切る場合は当然ですが、渓流の近くをこれに並行して作業路を計画する際にも、路面水を集中して排水させないなどの注意をする必要があります。そこで、集水面積が10ha以上ある谷線を渓流線として抽出し、ここから100m以内を要注意箇所として表示し、これにB集水面積別谷線図を重ねることで、路面水の処理工法や設置位置の検討に活用できます(図2)。

B集水面積別谷線図
 谷を横断する際には、降雨時の谷水対策が必要になります。図は、森林斜面の各点毎に集水面積を計算し、0.5ha以上の集水面積の谷を抽出して表示しています。谷は連続した線であり、下流に行くほど集水域は増えます。集水面積毎に谷を表示していますので、作業路計画時に谷を渡る際の工法や可否の判断に使えます(図2)。

    
図2 作業路開設指針図2
図2 作業路開設指針図2
@崩壊危険斜面図、A濁水要注意域図、B集水面積別谷線図を重ね合わせて表示している。谷線の数値は集水面積(ha)。

【地図作成と公開】

現在、主だった地区の地図は完成しており、全県域の作成作業を進めています。地図は順次森林研究所のHPに掲載して行きますので、活用してください 。

※使用については「作業路開設指針図の作成について」を参照してください。