クマハギ被害対策の効果
−「テープ巻」防除について−

(岐阜県森林研究所) 臼田 寿生



【クマハギ被害の現状】

「クマハギ」とは、ツキノワグマが樹木の皮を剥ぐことをいいます。剥皮された木は、材が変色するなど商品としての価値が低下します。また、剥皮が激しい場合には、樹木が枯死するなど森林機能への影響も心配されます。

岐阜県においては、根尾川、揖斐川流域と飛騨北部を中心に被害が多く、被害区域は年々拡大する傾向にあります。このため、適切な防除方法の確立が急務となっています。

クマハギ被害を受けた森林
クマハギ被害を受けた森林

【クマハギ被害対策の効果は?】

クマハギ被害対策としては、樹木に保護材を設置する「樹木保護対策」が主流となっています。中でも幹へ荷物梱包用のポリエチレンテープをらせん状に巻き付ける通称「テープ巻」による防除は、材料が手軽に入手できることなどから、主力対策として実施されているところです。

樹木保護対策(ポリエチレンテープ巻)
樹木保護対策(ポリエチレンテープ巻)

そこで、森林研究所では、「テープ巻」の効果を検証するため、対策実施後1〜10年経過した5林分の現地調査を実施しました。被害発生状況について調査した結果は次のとおりです。

1. 調査を実施した5林分のうち被害発生林分は5林分であった

2. 被害林分の被害木は50本中5本であった

なお、唯一被害を受けていた立木の被害は、テープ巻の最下部根元のごく一部に限られていました。この形跡から、クマは根元から皮を剥ごうと試みたものの、テープによりそれ以上の剥皮を阻止されたと推察できます。

根元に被害を受けた立木
根元に被害を受けた立木

次に、樹木の成長に伴いテープが幹へ巻き込まれる可能性を確認するため、テープの状態についても調査し、次の結果が得られました。

1. 調査木の全てにおいて、幹へのテープの巻き込みは発生していなかった

2. 設置後6年以上経過したものは半数以上が脱落していた(設置後の経過年数が多い林分ほど脱落率が高い)

この結果から、テープは立木の肥大成長により引きちぎられ、幹へ巻き込まれる可能性は低いと考えます。なお、今回の調査木は、いずれもテープが平らな状態で巻かれており、これがひも状に巻かれた場合には巻き込みが発生する可能性も考えられるため注意が必要です


【おわりに】

今回の調査では、「テープ巻」による防除は、効果が高く有効な対策であることがわかりました。一方で、完全にテープが脱落した立木があるにもかかわらず、全く被害が発生していない林分もあり、「テープ巻」以外の被害防止因子も考えられます。

森林研究所では、被害の実態調査やテープ巻き以外の防除対策についても試験を進め、着実な被害対策の推進を支援していく方針です。被害に関する情報提供など皆さまのご協力をお願いします。