情報機器を森林管理に活かす(4)
GPSの“正しい”使い方の鉄則 (後半)

(岐阜県立森林文化アカデミー) 竹島 喜芳



さて、今回は前回に引き続き、GPSの正しい使い方の紹介です。

【前回のまとめ】

最近ではGPSをご存じの方も多くなり、林業の現場でGPSを仕事で使わざるを得なくなっている方が増えてきました。しかし、普及とは裏腹にGPSの正しい使い方をご存じの方は少ないように見受けられます。林内はGPS衛星からの電波が、地形や樹木の影響をうけることが多く、GPSにとってタフな場所です。そのため「GPSは林内でカタログにかかれている性能が出ない」と思って間違いないのですが、例えGPSにとって条件の良い場所(空が開けたところで、木や地形の影響が少ないと思われるような所)であっても、“正しい”GPSの使い方を意識しないと、実は、カタログでかかれている性能さえ出すことができません。前回はその“正しい”GPSの使い方の4つの鉄則のうち、2つの鉄則を紹介しました。鉄則1が「GPSの電源は現場でいれるな。山に入る前に入れよ!」で、鉄則2が「そのGPS特有の持ち方がある。首からさげて移動するな!」です。今回は残りの2つの鉄則をお伝えします。



鉄則3 GPSでデータを取るときは、立ち止まって数秒まってから取れ!

これは私もはじめてその現象を見たときに驚きました。GPSは自分のいる位置を計測してくれる器械なハズです。例えば絵のようにまっすぐ歩いていたときに方向転換したら、GPSの位置算出結果も方向転換して欲しいところです。ところがときに、人は方向転換したけれど、しばらくGPSは今まで進んでいた方向を示し続けるという現象が起こります。この現象もしばらくすれば(10秒ほど)ほとんど、方向転換して戻ってきます。

昔のカーナビにはそのようなことがありました。例えば、車で移動していて、道を曲がったにもかかわらず、カーナビ上に示される現在地はそのまま直進。しかし、しばらくすると、カーナビは間違いに気づいたのか、ちゃんと現在地を示すように位置を示す。

この現象は大変クセモノです。つまり、山の中である場所の位置を知りたい場合、人は立ち止まったはずなのですが、GPSの位置計測はあたかも人が先ほどと同じように動いていると仮定して予測算出している場合があるのです。ですので、一息いれずに位置を計測すると誤差が大きいことがすくなくありません。

そこで、鉄則3のように立ち止まって一息ついてから計測をおこなってください

GPSの計測は立ち止まって一息ついてから


鉄則4 GPSは体からはなしたほうがよい!

鉄則1の説明の中で、山は木や地形の影響で人工衛星からの電波に雑音がはいるという話をしましたが、実は、人間の体もGPS受信機へ影響を与えます。例えば、GPSを胸元にもってGPSをのぞき込むようにして使うのは避けたほうがいいです。

私がGPSの研修を授業でやるときなんかは、外に出てGPS受信機の取扱を説明するのですが、学生達が一斉にGPSをのぞき込むときなどは人間の体がGPSの電波に雑音をいれてしまうようで、位置の精度がグッと落ちることがあります。

ですから、これはなかなか難しいかもしれませんが、たとえばGPSは肩につけて移動して(本当はヘルメットや帽子にGPSをガムテープなどで取り付けると一番いいのですが)、GPSの操作をするときはなるべく手を伸ばして体の中心から離して使うよう心がけてください(ヘルメットや帽子に取り付けていたら問題はありません)。


さて、前回、今回とGPSの“正しい”使い方についてご説明してきました。是非、4つの鉄則を頭に入れてGPSを活用してみてください。


とこで、4つの鉄則の説明をするなかで「なんだ、GPSはつかえねぇな、精度も悪いし、いろいろ面倒くさいそうだし」と感じた方もいたかもしれません。胸中お察しいたします。だけど、ちょっと待ってください。それでも、GPSは便利な器械であることには違いありません。これまで別の器械(コンパス)でやっていた仕事を代替させることはできませんが、これまで“できない”とあきらめていた“仕事”をやってのけてくれます。例えば、岐阜県外部公開型森林GISふぉれナビで空中写真と森林計画図を重ね合わせてみながら、気になるところの緯度経度を調べてその場所に行くだとか…。

次回はそんなGPSのお薦めの使い方や、そのための基本知識などについて紹介させていただく予定です。