森林管理のための森林被害危険度マップを作成しました
WebGISでも公開します

(岐阜県森林研究所) 古川 邦明



最近、森林の病虫害や気象被害が多く発生しています。特に、病虫害は、カシノナガキクイムシによるナラ枯れが拡大するなど、広域被害が目立ちます。広域の森林被害の対策には、発生区域の拡大状況などを予測して、防除にあたることが、効率的な防除に必要です。

森林研究所では、被害発生の危険性が高い場所を判りやすく示し、対策に役立てて頂くため、3年前から順次森林被害の危険度マップの作成に取り組んできました。冠雪害危険度マップは既にWebGISの「ぎふ ふぉれナビ」でも公開していますので、ごらんになった方もいらっしゃるでしょう。

今回、冠雪害危険度マップに続いて、マツ枯れやナラ枯れ被害危険度マップを作成しましたので紹介します。被害対策計画等に使っていただければ幸いです。なお、「ぎふ ふぉれナビ」での公開準備を進めていますので、アクセスしてみてください。


●マツ枯れ発生危険度マップ

県内のマツ枯れ被害の発生は、年々北上しており、現在発生していない地域も安心はできません。図1のマップは、主に温度条件に着目して作成しました。危険区域は、

  1. 被害エリア: 既に被害が蔓延している地域
  2. 被害拡大エリア: 発生区域が新たに発生している、いわゆる拡大の最先端地域で、重点的な防除が必要な地域
  3. 要監視エリア: 現在被害の発生は認められないが、被害が発生の危険性がある要監視区域

の3区分としています。

図1 マツ枯れ発生危険度マップ
マツ枯れ発生危険度マップ

●ナラ枯れ危険マップ

県内でナラ枯れ被害の発生が確認されたのは平成8年頃です。当初被害は揖斐川流域に限られていました。しかし被害は、長良川流域や岐阜市周辺にも拡大し、今後さらに拡大していくことが予想されます。マップは、2種類作成しました。

広域危険度マップ(図2)
人工衛星から撮影した高解像度の画像解析等から作成した森林植生図と、被害の発生箇所調査結果、被害区域拡大予測図から作成しました。発生地点からの距離に応じて、植生図からカシノナガキクイムシが食害する樹種を抽出し、その中で枯死の危険性が高いナラ類が優先する森林がもっとも危険度が高いと判定しています。

図2 ナラ枯れ広域危険度マップ
ナラ枯れ広域危険度マップ

景観要因による防除指針マップ(図3)
県内の観光地の多くは、山間部にあります。観光地内やそこに至る道路の背景にある山々にもナラ類が多く生育しています。こういった場所では、ナラ枯れに対して景観的な観点から、防除を行うことも必要となってきます。図3に示した指針マップは、観光スポット等から見える場所を抽出し、その区域内の植生に応じて色分けを行っています。
また同時に、より多くの場所から見える箇所を重点地区として区分したマップも作成しています。

図3 景観要因によるナラ枯れ防除指針マップ
景観要因によるナラ枯れ防除指針マップ

これらの危険度マップは、作成すれば終わりではありません。常に新しい情報を取り入れ更新していくことにしています。


岐阜県 外部公開型森林GIS「ぎふ ふぉれナビ」