情報機器を森林管理に活かす(1)
GPS(Global Positioning System)

(岐阜県森林研究所) 古川 邦明



県が管理する「ぎふ・ふぉれナビ」を始め、個人でも電子地図上に道路や事業地等を登録したりその閲覧が簡単にできるシステムが使える環境が整ってきました。これらのシステムは、森林管理の道具としての活用が期待されますが、情報の登録には、地図上の座標を正確に知る必要があります。その道具としてGPSを上手く使いこなすことがカギとなります。アウトドアスポーツ等では一般的になったGPSですが、森林管理に使うには問題点もあります。

そこで、今月から連載としてGPSと電子地図を組み合わせて森林情報管理に活かす方法をご紹介していこうと企画しました。初回は、森林管理に使えるGPSを紹介します。



森林管理に使えるGPS

GPSでの位置計測法は何種類かあり、それぞれに対応した機種がありますが、現時点で県内の森林で一般的に使えるのは、価格面からも単独測位と言われる方法を使っている機種です。測量用のGPSに比べ測位精度は落ちますが、最近の機器は、森林中でもかなりの確率で受信することができるようになり、業務でも充分使える機種が多く発売されています。今回は、そんなGPS機器を紹介します。

  1. ハンディタイプGPS
    一般的にGPSと言えばこのタイプになると思います(写真1)。右側の機種は腕時計タイプのGPSで、左側のハンディ器(一世代前の機種)に比べ非常に軽量で小型ですが、受信感度やバッテリーの持ち時間等はむしろ高くなっています。液晶ディスプレーに現在位置や移動した経路などが表示できます。本体のメモリーに位置データを記録して、パソコンに取り込み、電子地図上にプロットしたり、保存する事も可能です。
    ハンディタイプでも比較的詳細な地形図を表示できる機種もあります。山林の巡回調査や登山等のナビゲーションには充分使えます。
  2. GPS受信機
    ディスプレーはなく、パソコンなどに接続して使います。構造が簡単なため、最新のGPS受信用チップが組み込まれた安価な製品が次々と発表されています。
    受信感度が高く、室内でも正確に位置計測ができる機種もあります。PDA(Personal Digital Assistants:携帯情報端末)や小型のノートパソコンと組み合わせれば、大画面で電子地図やオルソマップなど写真地図を背景に使うことができ、受信状況を確認しながら位置測定ができますので、より詳細な位置計測や位置の同定が可能です。
    パソコンとは、RS232C、USB、無線(BlueTooth)などで接続します(写真2)。屋外で使うにはBlueTooth接続が便利ですが、殆どが外国製品のため電波法の規制があって日本国内では使えない機種が多いので注意してください。
  3. データ記録用メモリー内蔵GPS受信機
    上記2のGPS受信機に、計測データを記録するメモリーが搭載されたものです(写真3)。表示部はありませんが、特別な操作の必要はありません。小型ですから単体で現場の巡視や測量の際に持ち歩いてもじゃまになりませんし、作業車等に搭載しておけば移動経路と同時に正確な時刻も記録されます。デジタルカメラで撮影された画像には撮影時刻が記録されていますから、一緒に持ち歩けば後から撮影した位置を知ることもできますし、トラック等の運行管理にも使えます。
  4. GPSカメラ
    デジタルカメラで使われている画像データは、撮影時刻の他に緯度経度を書き込める仕様になっています。デジタルカメラとGPS受信機間でデータ通信することで、撮影と同時に位置情報が画像データに記録できます。GPS受信機にはデジタルコンパスを内蔵した機種もあり、この場合は撮影位置と撮影方向も記録できます。GPSとの通信機能を持ったコンパクトデジタルカメラは、現時点では国内で1機種しか無いようです(写真4)。近々海外の比較的安価な製品が発売されるとの情報もあります。
  5. GPS内蔵PDA
    高感度のGPS受信機を内蔵したPDAが数機種販売されています。接続のための設定は必要なく、GPS用の地図ソフトも内蔵しているため手軽に使えます。ただ内蔵されている地図は、道路地図ですから、森林管理で使うには少々役不足かもしれません。
ハンディGPS GPS受信機とPDA
写真1 ハンディGPS 写真2 GPS受信機とPDA

メモリー内蔵GPS受信機 GPSカメラ
写真3 メモリー内蔵GPS受信機(マッチ箱程度の大きさです) 写真4 GPSカメラ(画像データに記録された座標で、地図ソフト上で対応する位置とリンクさせることができる)

次回は、これらのGPSで得られたデータの活用方法について説明する予定です。