木のスタイルはみな同じ?
−スギ・ヒノキの細り表を作成中−

(岐阜県森林科学研究所)大洞智宏


 以前(岐阜県の林業2002年12月号)、このコーナーでクリの細り表が紹介されました。クリの細り表があるのだから当然、主な造林樹種であるスギ・ヒノキの細り表は、あって当然と思われがちですが、今まで岐阜県版のスギやヒノキの細り表は整備されていませんでした。このため、森林科学研究所にもスギやヒノキの細りについて幾度か問い合わせがあったのですが十分なお答えをすることができませんでした。今後、同様の問い合わせにお答えできるようにするのは勿論のことですが、「細り表」は木材を有効利用するための資料として有効なものになると考えたので、現在スギ・ヒノキの細り表を作成しています。

【細り表とは】

あそこの直径は何センチ?

 ここで、細り表について簡単に説明します。

 樹木の幹は一般に根元から梢に向かって徐々に細くなっています。極端にいえば円すいのような形をしており、根元と梢の付近の直径は大きく異なります。このような形状のため、手の届く範囲の直径は直接計測できますが、高い位置の直径を知るのは困難です。このため、樹高と簡単に測れる高さ1.2mの位置の直径(胸高直径)から知りたい高さの直径を推定できるように作られたのが「細り表」です。

 具体的に考えてみると、長さ6m、直径20cmの木材が必要な場合、高さ6mのところで直径が20cm以上ある立木が必要になります。しかし、どの木が条件に合う木かなのかを一見で判断するのは非常に困難です。このような場合に、立木の樹高と胸高直径が分かれば、「細り表」を利用して高さ6mの位置の直径を知ることができ、条件に合う木を見つけることができます。

【細り表の作り方】

 では、「細り表」はどのように作るのでしょうか。基本的な作り方の一つを東濃地域周辺で収集した3本のヒノキのデータを例として紹介します。

 3本のヒノキの地上1.2mから2m(一部1m)ごとの高さと、その場所の直径の関係は図-1のようになります。当然のことですが、地面から同じ高さでもその場所の直径は一本ごとに異なります。また、一本ごとの細りの様子も異なるように見えます。

 次に、この3本の木の樹高を1、樹高の十分の一の高さの直径を1として図を書き直すと図-2のようになります。ここでは、3本の木の点がほぼ同一線上にならんでいるように見えます。このことは、相対的な高さと、その高さの直径には同じ関係があることを示しています。言い換えれば、違う大きさの木も伸縮させて同じ大きさにしてやれば、スタイル(細り)も同じになるということです。

図1 高さと直径の関係
図2 相対的な高郷直径の関係

 この図から、東濃地域周辺のヒノキの相対的な高さと直径の関係(細り具合)を知ることができます。この関係に、細りを知りたい木の樹高と胸高直径をあてはめ、直径を知りたい高さを代入することによって、その直径を知ることができます。これらの、直径、樹高、高さ、を整理して表にしたものが細り表となります。

【おわりに】

 このように作られた細り表では、データの集め方によって適応できる地域や樹高、直径などが異なってきます。このため、より正確な細り表を作成するため、今後も多くのデータを収集する必要がありますので、読者の皆様のご協力をお願いいたします。


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