ソメイヨシノの性質と衰弱対策(2)
(岐阜県森林科学研究所)中川 一
森林のたより 2005年3月号掲載
はじめに
前号ではソメイヨシノについて特色と衰弱状況を紹介しましたが、今回はソメイヨシノを管理していくための対策について紹介します。良い管理で寿命を延ばす
- 青森県の弘前公園では、明治15年(1903年)植栽のソメイヨシノが昭和30年(1955年)頃瀕死の状態になりましたが、リンゴの栽培技術を参考にした管理により持ち直し、現在ではソメイヨシノの名所となっています。
- 腐朽対策や樹勢回復により寿命を延ばすことができます。
写真1 幹の空洞 幹の腐朽対策
- 桜は幹枝が腐朽しやすいため、適切な病虫害防除によって幹や枝の枯死部を少なくして腐朽を防止することが大切です。(写真1)
- 「桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿」と言いますが、極度に衰弱した枝や枯れた枝、テング巣病の枝は、早めの切除が腐朽防止に有効です。
- 枝の切除は枝基部で行い、腐朽しないうちに周囲から巻き込むようにします。
- 腐朽を進行させないためには、切除部に速やかな木固め剤などの塗布が有効です。(写真2)
- 空洞など腐朽の進んだものに以前はウレタン充填がよく行われましたが、この方法による完全な腐朽防止は困難です。(写真3)
写真2 枝の切断と木固め剤塗布
写真3 割れ、隙間のできたウレタン充填成育環境対策
- 環境変化
- 植えられてから長い年月が経つと道路舗装、側溝設置などの工事による周囲環境の変化に順応しきれずに衰弱することがあります。
- 木が大きくなった場合には地上部と地下部のバランが保てるスペースの確保が必要です。
- 土壌改良と施肥
- 樹勢をつけるには、樹冠によく光が当たるだけでなく、肥料、水分がよく吸収できる良い土壌が必要です。
- 更に、不足した肥料分を補う施肥が有効です。
桜の更新
- 桜が枯れた後、後継ぎにまた桜を植える場合には、忌地現象のため成長が悪くなることが多いので注意しなければなりません。
- また、桜の枯れた原因がナラタケ病などの土壌病菌による場合には、土壌中に残った病気が後継樹を加害することがあります。
- 老桜の回復が見込めない場合には、試験的に後継の桜を植えてみてから植え替えが可能かどうかの検討が必要です。
まとめ
ソメイヨシノは、非常に腐朽しやすいため、若い時から傷ができないような管理が必要です。
- 大きな傷ができてしまったら、塗布剤などで腐朽を防止することが必要です。
- 老木になると樹勢が衰えるため、土壌改良や施肥が有効となります。
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