ソメイヨシノの性質と衰弱対策(1)
(岐阜県森林科学研究所)中川 一
森林のたより 2005年2月号掲載
はじめに
ソメイヨシノは、植栽された桜の大半を占め、桜と言えばほとんどの人がこの桜をイメージします(写真1)。
しかし、公園や学校などに植えられたソメイヨシノの多くは、老齢化し衰弱が目立ってきています。
そこで、ソメイヨシノを適切に管理し、寿命を延ばし花を長年楽しむため、その性質と衰弱対策について2回にわたり紹介します。
写真1 満開のソメイヨシノ ソメイヨシノの特色
- ソメイヨシノの由来
- 江戸時代終わりから明治初め頃、江戸染井村(東京都豊島区)の植木師から「吉野桜」として販売された桜です。
- オオシマザクラとエドヒガンの雑種で、花の色・形や咲き方など両親の良いところを受け継いだ桜です。
- 1本の木から増殖したクローン(同じ遺伝子を持った集団)で、全て同じ性質を持っています。
- 成育特性
- 雑種強勢(雑種の子供が両親よりも強い勢いを持つこと)により成長が速く大きな木となります。
- 若くて小さい木の時から花を多く着け続けます。
- 痩せた場所でなければ良く成長し、北海道北部を除いて日本全国で育てられています。
ソメイヨシノの欠点
- 短い寿命
- ソメイヨシノは、他の桜に比べて寿命が短く、一般に60年〜80年で老齢期に達すると言われています。
- 多い病害虫被害
- 害虫の発生が多く、アメリカシロヒトリ、オビカレハ、モンクロシャチホコなどによる葉の食害と、樹勢が衰えてきた樹でコスカシバによる樹皮下の食害が目立ちます(写真2)。
- 病気では、枝がテング巣病に罹りやすく、根では人に踏まれるなど傷ついた場合に根頭癌腫病、土壌が過湿になった場合にナラタケ病が発生しやすくなります。
- 腐朽しやすい幹・枝
- 幹や枝に大きな傷がつくと非常に腐朽しやすく、腐朽を放っておくとすぐに空洞となります。
- 腐朽は、カワウソタケ、チャカイガラタケ、コフキタケなどの菌類が木部に侵入して起こり、腐朽が進むとキノコが発生します(写真3)。
写真2 コスカシバ被害
写真3 カワウソタケの腐朽老齢木の衰弱状況
- 枝の伸びが悪くなり、木全体の花着きが悪くなります。
- 樹勢が衰えると梢端部の枝や日陰となる枝枯れが目立つようになり、古い枯れ枝などにはキノコが生えます。
- 太い枝の枯れや幹の大きな傷から腐朽が進行し、空洞が目立ってきます。
- 長年のコスカシバによる幹加害により、デコボコの幹形となります。
- 人の踏みつけなどにより表層土壌が硬くなると、地表に現れる根が多くなり、更に人の踏みつけが加わると痛んだ根が多くなります。
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