(岐阜県森林研究所) 大重隆太郎
森林のたより 2015年2月号掲載
森林技術師は、岐阜県が呼称する指導林家、林業士、林業作業士などの資格をもっている森林技術者の総称です。日頃は各地域で県の「普及指導協力員」として、研修の講師、実技指導などをしていただいています。また、各地域を統括する組織として岐阜県森林技術師連絡協議会(以下、森林技術師会)があります。
活動としては、毎年、情報交換を兼ねた総会と「森林技術師大会」と称した森林整備ボランティア活動を実施しており、今年度は、第39回全国育樹祭「間伐材活用おもてなし事業」(以下、おもてなし事業)に協力したのでご紹介します。
目 的
・間伐や搬出を実体験し、森林を守ることの大切さを学ぶ
・全国育樹祭に積極的に参加し、おもてなしの心を養う
日 時
平成26年10月28日(火)
午前の部9:30〜11:00
午後の部13:00〜14:45
場 所:第39回全国育樹祭お手入れ会場(揖斐川町谷汲名礼地内)
参加者:揖斐川町の小学校児童 167人
6月に開催した森林技術師会の総会において、「おもてなし事業」に全面的に協力することを決議し、開催当日の現地指導を行うことになりました。
また、安全を期すために具体的な搬出方法について相談があり、会場の条件や木材の重量など、実際に間伐材をどうやって子どもたちが運び出すのか、現地で関係者とともに事前に実践してみました。最終的に森林技術師から助言をいただき、必要なスリングベルトやロープなどを準備して、後方からトビで補助する方法をとることになりました。
さらに「動滑車」などによる搬出体験をさせてあげたいという要請もあり、森林研究所で準備することになりました。
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事前準備 |
開会式では、森林や木の手入れのお話を交え、大野公之会長に森林技術師会の紹介をしていただき、間伐材の搬出作業と枝払いの班に分かれ、地元の林業普及指導員と連携して技術指導にあたりました。
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開会式の様子 |
地元の揖斐郡森林組合の技術者が伐倒した間伐材の枝払いに挑戦しました。参加児童は手ノコを用いて交代で体験しました。
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枝払いの体験 |
一方、間伐材の搬出では、4人では全く動かず、徐々に人数を増やしてようやく動き出しました。児童が8〜12人で引っ張り、森林技術師の方が後ろからトビで方向を誘導しました。運んだ間伐材は、森林技術師の方々がトビを使って掛け声とともに手際よく積上げ、必要なスペースを確保しました。
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間伐材の搬出 |
午前と午後の部、学校単位で児童が入れ替わります。その間の休憩時間では恒例の昼食を兼ねた情報交換になりました。導入した林業機械、材価の動向など最新情報が話題になりました。林業機械に興味のある森林技術師からは、「若い技術者に来年の林業機械展の手伝いをさせて、しっかり勉強もさせたい」という前向きな提案などもいただきました。
小学5年生には少し難しい内容でしたが、2連結の動滑車を使うことによって力は4分の1、引っ張る距離は4倍となることを体感してもらいました。まずは木材側のロープを@の方向に引いて木材の重さを感じてもらいました。次に動滑車側のロープ(Aの方向)は軽く引けることに驚く子どもたちの表情はとても印象的でした。軽くなったことを確かめるため、人数を減らしてみましたが、間違いありませんでした。最後に機転を利かせた先生の指示の下、みんなで「動滑車」と大きな声で連呼して言葉を覚えてくれました。いつか学校で習ったときにこの体験を思い出してくれると幸いです。
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動滑車の体験 |
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動滑車の2連結 |
午前、午後の部ともに子どもたちが満足した表情で記念撮影ができたことが何よりでした。育樹祭を通じて森林の手入れのこと、林業のことを考えるきっかけになることを期待します。
今回の「おもてなし事業」は次の取組につながります。運び出した間伐材はプランターキットに加工されます。県内各地の小学校で製作され、再びこの地に戻り、全国育樹祭おもてなし広場などの会場を飾ることになります。そんな説明を受けて子どもたちは帰路につきました。
森林技術師会としても、全国育樹祭の本番に向け、協力し、盛り上げていきたいと考えています。
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午後の部の記念撮影 |