市町村森林管理委員会の取り組み
課題解決の仕組みづくり

(岐阜県森林研究所) 大重隆太郎



はじめに

地方分権による権限委譲、広域合併により、森林・林業行政における市町村の役割が増大しています。県では地域の森林づくりが適切かつ効果的に実施されるよう、その地域における森林づくりの方針の提案などを行うことを目的とした岐阜県独自の組織「市町村森林管理委員会」(以下「委員会」という)を提唱し、林業普及指導員が中心となり設置を支援してきました。現在では森林のある県内34市町村のうち、27市町村で設置されています(既存組織の拡充含む)。そこで、各地域の取り組み事例の概要を紹介します。    
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事例1 諮問機関として

昨年度、森林法の改正により市町村森林整備計画策定時の新たな手続きとして「有識者への意見聴取」が導入され、この意見聴取の場として多くの市町村で、委員会が活用されています。今年度も計画の策定や変更時に内容の検討や協議のため委員会が開催されています。

事例2 合意形成の場として

森林法の改正により市町村森林整備計画では、森林を重視する機能別に区分(ゾーニング)することとなりました。また、区分ごとに長伐期施業や複層林施業等の施業種や具体的な伐期齢等を定める必要があります。定められた内容は、森林経営計画の認定や伐採届出時の指導の基準となるもので、森林の取扱いに制約を課すものです。このため、ゾーニングを行う際には林業関係者の合意形成を図り、十分に周知する必要があります。
 郡上市では、委員会内にゾーニング検討部会が設置され、「水源と景観を重視する」といった森林の取扱に関する基本的な考え方をまとめ、市に提言する予定です。市ではこの提言をベースに具体的な森林区分を決定するという手続きでゾーニングの変更を行うこととしています。

事例3 地域独自の取り組み

市町村独自の構想や基本計画、実施計画策定に委員会が携わり、これらの計画に即して各種施策、プロジェクトが実施される例もあります。恵那市、大垣市では、地域住民が主体となり、林地残材を有効活用する仕組みづくり「木の駅プロジェクト」が取り組まれています。

事例4 集約化の推進

施業地の集約化に関して、揖斐川町では森林管理委員会で間伐モデル推進地区を決定し、関係者を構成員とした地元組織を設置し、所有者と行政と森林組合が一丸となって集約化に取り組んでいます。
 また、岐阜市、土岐市、可児市等では、一度に「全地域を対象に集約化を進める」よりも「できるところから始める」という方針のもと、市有林やまとまりのある人工林を対象に絞り集約化を進めるための組織として、委員会を設置しました。

おわりに

森林は木材を生産するという地域の産業の場としても重要な役割とともに、水土の保全や生物多様性の保全等多くの役割を発揮し、私たちの暮らしに役立っています。この貴重な地域の資源をどのように守り育てていくべきか、行政だけでなく地域が一体となって考えていくことが重要だと考えます。まさに委員会のあるべき姿はそこにあり、それぞれのお立場でご協力をいただけると幸いです。

  
郡上市森林管理委員会ゾーニング検討部会の様子
郡上市森林管理委員会ゾーニング検討部会の様子
  
揖斐川町谷汲大洞区森林保全会の様子
揖斐川町谷汲大洞区森林保全会の様子