シイタケを科学して保存に役立てる

(岐阜県森林研究所) 上辻 久敏



生シイタケは日持ちが悪く変色しやすいという欠点があり、この対策技術の開発は、全国の産地で求められています。当所ではシイタケの保存技術の開発に取り組み、主な販売形態であるトレイに並べてラップしたパック商品を更に袋で密封して、 通気を抑制(密封処理)することで、変色を抑制できることが分かってきました。
  シイタケを変色させる物質は酸化で合成されることから、変色には酸化反応を促進する酵素が強く関与していると考えられます。収穫後のシイタケを粉砕し、シイタケ内部に存在する酸化酵素の働きを測定してみると、無処理のパック商品の場合、 日数が経過するごとにシイタケ内部の酸化酵素の働きが上昇しました。一方、密封処理したパック商品では、逆に低下していました。


密封処理したパック商品は、いずれ開封することになりますので、密封期間が保存効果にどのように影響するのか、また開封後のシイタケはどうなるのか、密封期間の影響についても調査を行いました。
  密封保存における開封の影響を調査するため、保存開始から20日間密封したままのもの、保存途中の密封13日目または15日目に開封するもの、および保存開始から20日間密封しない無処理の4つの保存条件でパック商品を比較しました。
  その結果、保存途中で密封処理を停止して開封すると、抑制されていたパック商品の変色が進行しはじめることが分かりました(写真)。
  また、保存20日目の酸化酵素の働きを測定すると、無処理で最も高く、次に密封13日目、15日目の順で働きが高まっていました。20日間密封処理のパック商品では、酸化酵素の働きは低下したままでした。経時的な測定の結果、密封処理により一時的に低下していた酸化酵素の働きが、開封後は徐々に高まってくることが分かりました。

写真 密封期間の影響(保存20日目)
写真 密封期間の影響(保存20日目)

現在進めている試験では、通気性の低い素材で密封し通気性を低下させた状態を保つ方が、酸化酵素の働きを低下させ、シイタケの変色抑制対策として有効であることがわかっています。しかし、通気性が低い密封処理により変色を抑制したとしても、保存期間が長くなると好まれない匂いであるシイタケの揮発性成分が蓄積する場合があります。 揮発成分対策には、密封をどのタイミングで開封するかが重要になってきます。商品価値と保存期間を両立する最も適した密封条件を決定するため、引き続き技術開発を進めてまいります。