キノコ栽培に用いるオガコの適性を栽培前に判断するために
―ナラ枯れ被害木オガコの適否判定―

(岐阜県森林研究所) 上辻 久敏



広葉樹の調達に不安

ナメコやシイタケ等の菌床栽培では広葉樹のオガコが必要です。過去に東日本ではキノコ栽培用の広葉樹を主に福島県から調達していました。しかし、原発事故後、調達できなくなっており、岐阜県内の生産者も広葉樹の安定調達に不安を感じています。

新規の入手オガコで発生する問題

これまでの調達先からキノコ栽培用のオガコが入手できなくなったため、他の産地から、オガコを入手することになります。ところが、新しく入手したオガコで栽培し、キノコの発生が悪い結果に終わることがあります。現状では入手したオガコが栽培に適するものであるのかは、数か月間を要する栽培を実際に行なってみないとわかりません。これは大きな問題です。

キノコ栽培に適するオガコを見つける技術の開発

入手したオガコがキノコ栽培に適するものなのか栽培前に判断する技術があれば、数か月後の失敗を未然に防ぐことができます。
 これまでキノコ栽培にあたえるオガコの影響を検討してきました。その中でナラ枯れと呼ばれる被害を受けた木のオガコを用いることがシイタケの発生を低下させる結果を得ています。ナラ枯れとは、ブナ科樹木が枯れる病害で、被害が全国規模で拡大しています。主な被害樹種は、コナラとミズナラです。今後、キノコ栽培に使用する広葉樹のオガコ材料にナラ枯れ被害を受けた木が混入する可能性があります。
 そこで1つのモデルとして、過去の栽培試験で、シイタケの発生に悪影響があったナラ枯れ被害木のオガコを用いて、栽培せずとも事前に栽培適否を予測する方法について研究しています。
 キノコの菌糸の伸びの良否がオガコの判定に利用できるか菌糸の生育への影響を調べるため、コナラのナラ枯れ被害を受けた木のみで作成したオガコと被害を受けていない健全な木だけで作成した2条件のオガコで、12種(※写真の注釈に記載)のキノコの菌糸の  伸びを比較する試験を行いました。12種すべてのキノコで健全木よりもナラ枯れ被害オガコで菌糸の伸びが悪い結果でした(写真:ナメコとシイタケの結果)。また、菌糸の生育に影響するオガコの成分についても絞り込みを進めています。

  
菌糸の伸びの比較(コナラ木粉)
菌糸の伸びの比較
(コナラ木粉)

最後に

コナラオガコのナラ枯れ被害の有無は、キノコの菌糸の伸びを利用すると、安価で菌床を製造する施設ならどこでも活用可能な方法です。しかし、オガコの判定にキノコの菌糸が伸びるのを待つ必要があるので10日程度を要します。
 今後、オガコに含まれるキノコ栽培に負の影響を与える物質で判定できれば、キノコの伸びを待たずとも数分でオガコの栽培適否が判定できる可能性があります。オガコに含まれるキノコ栽培のカギとなる物質や菌糸の生育への影響を明らかにしていくことが、栽培に適するオガコ等の栽培資材の選択を可能とし、栽培不良を事前に予防する技術開発に有効だと考えられますので、様々な方法のメリットを考慮しつつ、これからも技術開発を進めていきます。