廃菌床はシイタケ栽培に利用できるか

(岐阜県森林研究所) 久田 善純



【はじめに】

シイタケの栽培方法には原木栽培と菌床栽培があります。菌床栽培とは、オガ粉など(以下「基材」)に米糠などを混ぜて固めた「菌床」に、種菌を植え付けて育てる方法です。県内産のシイタケのうち、約87%が菌床で栽培されています。

当所では、シイタケの菌床栽培の低コスト化に取り組んでいます。そこで、収穫が終わったあとの菌床(以下「廃菌床」)に着目しました。廃菌床は、通常は堆肥にしていますが、もし、これを菌床の基材の一部に再利用できれば、原材料費を削減できます。しかし、廃菌床はシイタケ菌の作用を受けて、もとのオガ粉とは質が変わっているので、基材として利用することが可能なのか、検証する試験を行いました。


【室内試験では】

まずは、研究室内で廃菌床の再利用を試みました。最初に、基材にブナオガ粉のみを用いた菌床でシイタケを栽培しました。栽培が終わったあと、その廃菌床を細かく砕き、廃菌床:ブナオガ粉=4:6の割合で混ぜた基材を用いて菌床をつくりました(「再利用区」)。さらに、再利用区の菌床で栽培したあとの廃菌床で同様の作業を行い(「再々利用区」)、発生量などへの影響を確認しました。
 その結果、再利用区、再々利用区ともに、廃菌床を利用していない対照区と同等の発生量がありました(図−1、写真−1)。

廃菌床を利用した試験区のシイタケ発生量 シイタケの発生状況
図-1 廃菌床を利用した試験区のシイタケ発生量
( 菌床の重量:1.0kg )
*−*間、**−**間に有意差なし
( Steel-Dwass検定,>0.05 )
写真-1 シイタケの発生状況
( 左:対照区 , 右:再々利用区 )

再々利用区は、子実体の発生が対照区
よりも1〜2日遅れる傾向がありましたが
最終的に発生個数、発生重量ともに対照
区と同等になりました。


【現場と比べると】

研究室内の試験では、廃菌床を基材として再利用できました。この試験は、空調設備で温度と湿度を一定に保ち、雑菌や害虫の侵入が少ない環境で行っており、また、試験結果を早く出すために、短い期間(培養に約3ヶ月間、発生に約3ヶ月間)で栽培しています。

しかし、実際のシイタケの生産現場は、栽培の環境や工程が異なります。空調のない簡易な施設(遮光対策や加温設備はあり)で行われることが多く、栽培にもっと長い期間をかけます。
 例えば、秋から冬に収穫する栽培工程の場合、培養に約9ヶ月間、発生に6ヶ月以上かける事例があります。栽培終盤には、菌床に雑菌が多く付着しますし、内部のオガ粉は研究室内の試験のものよりも分解が進んでいるはずです(写真−2)。

実際の生産現場から出た廃菌床
写真-2 実際の生産現場から出た廃菌床


【実用化に向けて】

このため、現在、県内のシイタケ生産者が排出した廃菌床を用いて、再利用試験を実施しているところです。
 今後、実用化するための課題を洗い出し、その解決に向けて取り組んでいきます。