サルナシってどんな植物?

(岐阜県森林科学研究所)小枝 剛


『サルナシの特徴』
 サルナシ(Actinidia.arguta)(写真−1、2)は、マタタビ科(Actinidiaceae)に属する雌雄異株または雌雄雑居性の落葉性つる植物で、その仲間には科名になっているマタタビ(A.polygama)(写真−3)や、シナサルナシ(A.chinensis)などがあります。シナサルナシを品種改良したものが、現在ではポピュラーとなった果物のキウイフルーツです。
 サルナシとマタタビは日本全国に自生していますが、マタタビは開花期頃から葉の先が白色化するため探し出し易いのに対し、サルナシは葉柄が赤紫色である事ぐらいしか目立つ特徴はなく、また、マタタビに比べて自生数が少ないため、注意深く探さないとなかなか見つけ出す事は出来ません。サルナシの果実はキウイフルーツより小ぶり(写真−4)で、表面に毛がないため皮をむくことなく食べる事が出来ます。キウイフルーツよりも香りが強く、かすかな酸味と甘みがある食味の良さから「珍果」と評価する人もいます。そして、果実酒やジャムなどの加工品にも利用されます。また、ビタミンCなどの栄養価がたいへん高く、タンパク質分解酵素を大量に含み、疲労回復、強壮、整腸、補血などの効能があるといわれています。

写真-1 サルナシの花(両性花)
写真-1 サルナシの花(両性花)
写真-2 サルナシの実
写真-2 サルナシの実
写真-3 マタタビの実
写真-3 マタタビの実
 
写真-4 果実のサイズの比較
写真-4 果実のサイズの比較
左:サルナシ 中:マタタビ 右:キウイフルーツ

『サルナシの栽培』
 サルナシの果実栽培に取り組んでいる地域は東北地方に若干あるだけで、岐阜県内のお店などに出回るサルナシは自生地にて採取される物がほとんどです。そして、その採取量はその年の気象に左右されるために安定していません。しかも造林地では自生個体が造林木に巻き付いて被害を与えるのを嫌って除去されたりして、あまり採取されていないのが現状です。

『岐阜県での安定生産に向けて』
 サルナシは、リンゴやモモなどの果樹に比べ土地を選ばないため、荒れ地や休耕地、そして傾斜地を活用した栽培が可能です。しかも、植え付け後の管理作業も少なくて済むため、副業栽培に有利な林産物であるといえます。そして、もともと山間地に自生し、寒さにも強い事から、岐阜県の山間地で栽培可能な特用林産物としての適性を十分に備えています。しかし、実際に岐阜県の山間地で安定した生産を行なうには、まだデータが不足しています。
 そこで、山間地でのサルナシ栽培を実施できるよう試験研究を進めています。現在は、植栽に用いる苗の優良品種を作出するために準備を進めています。そして将来は、栽培管理が容易で収量も多いなどの特性を持つサルナシを提供していきたいと考えています。


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