シイタケ栽培の敵 キノコバエ!

(岐阜県森林科学研究所)井戸好美


 2年前の春、シイタケ生産者から「施設内に虫が大発生しているので見てほしい」という相談がありました。早速現場へ行くと、施設内にはキノコバエと呼ばれる小さな虫がたくさん飛んでいました。このキノコバエは直接キノコを食べることはありません。しかし、傘の裏に潜み、商品として出荷された後パック内に出てきます。当然こうした虫入りキノコは消費者が購入してくれません。このため、シイタケ生産者にとっては大きな被害となります。それどころか、こうした被害が多くなれば、信用問題になりかねません。
 本県では平成元年頃からシイタケ施設でキノコバエがみられるようになりました。しかし、被害が問題になることはありませんでした。それでは何故、近年被害が増えたのでしょうか?
 この原因を明らかにすれば、キノコバエ被害を減らす手掛かりが得られると考えました。そこで、県内の菌床シイタケ生産者を対象にアンケート調査を実施し、被害の増加原因を検討することにしました。

◆キノコバエの被害は?

図1 キノコバエの発生被害

 キノコバエの発生は全施設の九割にも達し、この内約四割で被害が確認されました(図1)。被害はキノコバエ成虫がパック内に入るのが大部分でした。


◆被害は県下全域?

図2 キノコバエの被害状況(生産地域別)

 県内の生産地域別のキノコバエ被害を示したのが図2です。被害は飛騨地域に集中していました。しかし、同じ飛騨地域でも被害が多い所と少ない所がありました。そこで、被害多発地の吉城地区と少ない清見地区を比較してみました。


表1 キノコバエの被害状況(吉城地区と清見地区)

 被害の少ない清見地区は、菌床全面からキノコを発生(以下全面発生)させる方法で、給水方法は菌床を浸水する施設が大部分を占めていました。これに対し、被害の多い吉城地区は省力化の為に導入された菌床上面からのみキノコを発生(以下上面発生)させる方法で、給水方法は菌床表面が乾燥しないように散水する施設が多くみられました。特に上面発生を行っている全ての施設で被害が確認されました(表1)。
 このことから、キノコバエ被害は栽培方法、特に上面発生と深い関係があると推察されました。


◆被害の増加原因は?

図3 キノコバエの被害状況(栽培管理方法別)

 そこで、栽培管理方法の違いによる被害状況を検討しました。その結果、発生方法では上面発生、給水方法では散水や注水処理での被害割合が高いことが分かりました(図3)。
 これは給水方法(浸水→散水や注水)の変更により、菌床表面や菌床内部のキノコバエ幼虫が水で洗い流されなくなったためと考えられます。
 これらのことから、キノコバエ被害の増加原因は上面発生の増加により、給水方法が浸水から散水や注水に変更したためと考えられます。このため、被害を減少させるには給水方法を浸水処理に戻すことが有効と考えます。しかし、一度省力化のために導入した栽培システムを元に戻すには多大な経費と労力を要するので困難です。
 現在、当所では今回のアンケート結果をもとに、生産者と共同で上面発生でキノコバエ幼虫を洗い流す栽培技術の開発に取り組んでいます。得られた成果はいち早く現場にフィードバックしたいと考えています。



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