今、サクラが危ない!クビアカツヤカミキリに注意を

(岐阜県森林研究所) 大橋 章博



2017年はヒアリが国内で見つかり、大きな話題となりました。近年、経済のグローバル化とともに、外来生物の侵入が増え問題となっています。その中の一つにクビアカツヤカミキリがあります。放っておくと、将来花見ができなくなるのでは、と危惧されています。

そこで、今回はクビアカツヤカミキリについて紹介します。

クビアカツヤカミキリとは

体長25〜40mmの大形のカミキリムシです(写真1)。

  
写真1. クビアカツヤカミキリ成虫(左:♂、右:♀)
写真1. クビアカツヤカミキリ成虫(左:♂、右:♀)

本種の本来の分布地域は、中国、朝鮮半島、ロシアとされています。2012年に愛知県で初めて確認され、現在では、栃木、群馬、埼玉、東京、大阪、和歌山、徳島の8都府県で定着が確認されています。侵入経路は、輸送用の木製パレットの内部に幼虫が潜り込んだまま持ち込まれ、国内で羽化・脱出したのではないかと考えられています。

国内ではサクラ(ソメイヨシノ)、スモモ、ウメ、モモを加害することがわかっています。原産国では、このほかにカキ、ハコヤナギ属、ヤナギ属、コナラ属などの樹木も加害するようですが、国内では確認されていません。

成虫は、6〜7月頃に木から脱出すると、すぐに交尾し、樹皮の裂け目に産卵します。野外で実際どれだけ産卵するのかはわかっていませんが、飼育下では1匹のメスが1000個以上産卵した例もあることから、繁殖力が高いと考えられます。ふ化した幼虫は、樹皮下に穿孔し、形成層を食害して、2〜3年かけて成虫になります。幼虫が生育すると、ミンチ状のフラス(木くずと糞が混じったもの)を坑道から排出します(写真2)。これが被害発見の目印となります。多数の幼虫に食害された木は枯死することもあります。

  
写真2. 幼虫が排出したフラス
写真2. 幼虫が排出したフラス

カミキリ侵入後、多くの地域で被害が周囲の市町村に拡散しています。現在、被害は並木や公園に植栽された桜にとどまっていますが、山の中のヤマザクラ等へ拡がると手の施しようがなくなるため、早期の対策が大切です。

防除対策は

現在、防除対策として、次のようなことが行われています。(1)幹にネットを巻きつけて、木から羽化してきた成虫を捕殺する。(2)樹皮を削って、中にいる幼虫を掘り取る。(3)フラスが出ている穴に針金を差し込んで幼虫を殺す。(4)フラスが出ている穴に殺虫剤を注入する。(5)被害木を伐倒し、粉砕または焼却処理する。

(1)から(4)は手間がかかる一方で、見落としがあったりすると効果は半減します。(5)の伐倒処理が最も効果的なのですが、木が枯れていない場合、サクラの伐採に当たっては、地元の合意形成が困難となり、思うようにできないのが現状です。

  
写真3. 樹皮を削って掘り出した幼虫
写真3. 樹皮を削って掘り出した幼虫

早期発見が大切

幸いにも岐阜県ではまだ被害は見つかっていません。被害の定着を防ぐには、被害を早期に発見し、侵入初期に駆除することが非常に重要です。

もし、サクラの木からフラスが出ているのを発見したら、森林研究所へご連絡ください。