直径から材積を知る
飛騨地方における広葉樹の一変数材積式

(森林科学研究所)横井秀一


簡単に材積を知りたい
 森林に関わる仕事をしていると、立木の材積や森林の蓄積が必要になる場面が数多くあります。材積を求める最も一般的な方法は、立木の胸高直径と樹高とを測定し、材積式で計算するか、材積表から読みとるというものでしょう。そして、蓄積は単木材積を積算するという方法で求めているのではないでしょうか。
 すなわち、材積や蓄積を知るためには、胸高直径と樹高を測らなければならないということになります。ところが、この樹高の測定がくせ者で、労力がかかる割には測定精度が今ひとつです。そこで、樹高の測定をできるだけ簡便にするため、直径階ごとに数本ずつの標準木のみ樹高を測定し、樹高曲線(林分ごとの胸高直径と樹高の関係を示すもの)から残りの立木の樹高を推定するなどの工夫がなされています。それでも、何十本かの立木の樹高は測定しなくてはなりません。いっそのこと、樹高を測定しなくて済ませるということはできないのでしょうか。

直径だけから材積を推定する
 材積を推定する方法は、古来いくつもの方法が考案されています。これらは、基本的には、いかに推定精度を高くするかということを目指しています。精度を高くするためには測定項目を多くすればよいのですが、その分、調査に時間がかかるという難点が生じます。そのため、多少の精度を犠牲にしてもより簡単な測定で材積を推定する方法も模索されてきました。その究極が、胸高直径から材積を求める、一変数材積式あるいは一変数材積表による方法です。
 変数が一つということは、同じ胸高直径の木は全て同じ材積になるということを意味します。しかし、こんなことは実際にはあり得ません(そのために、胸高直径と樹高の二変数材積式が使われています)。このことが精度が悪くなる原因であり、この方法の最大の問題点であるといえます。この方法で少しでも精度を良くするためには、より狭い範囲(樹種と地域)で材積式や材積表を調整することが必要になります。この範囲を限定すればするほど精度が良くなるのは当然ですが、今度はその調整に手間がかかるという問題が生じてきます。
 このように、精度と簡便さや普遍性とは相反するものです。要はどこで妥協するかということで、材積を求める立場からは、必要とされる精度を満足させる方法の中から最も簡便な方法を選択すればよいといえるでしょう。ただし、そうした選択の幅を広くするためには、いろいろな材積式や材積表が準備されていることが必要です。

広葉樹の一変数材積式

図−1 広葉樹の胸高直径と材積の関係

 そこで、飛騨地方の広葉樹に適応できる一変数材積式を調整しました。調整に使用した資料は、飛騨地方で広く集めた広葉樹(胸高直径3〜99cm)5,000本余りのデータです。これらの資料から二変数材積式を用いて材積を計算し、この材積と胸高直径との関係を検討しました。
 図−1は、胸高直径と材積の関係を示したものです。この関係から、できるだけ誤差が小さくなり、誤差の分布にも偏りが生じないような式を求めました。その結果、得られた式がこれです。

 また、この式から計算した材積表は表−1のとおりです。

表−1 飛騨地方における広葉樹の1変数材積表

 この材積式や材積表の適用範囲は岐阜県飛騨地方の広葉樹で、胸高直径が3〜99cmの範囲にあるものです。この適用範囲は、一変数材積式としては広い方です。そのため、精度の方はだいぶ犠牲になっています。それほど高い精度が求められない場合や樹高を測定することができない場合(過去のデータやその木が伐採されてしまったときなど)には、有効な方法となるでしょう。


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