菌床シイタケ栽培施設でクリタケを作る
(岐阜県森林研究所)井戸好美
森林のたより 2006年10月号掲載
写真1 シイタケ用菌床培地から発生したクリタケ 本誌の2004年11月号で「今が旬のキノコ クリタケ」と題し、クリタケの菌床栽培への取り組みとして、温度・湿度が管理できる施設(以下、空調施設)を利用した栽培技術を紹介しました。そこで、今回は温度・湿度が管理できない施設(以下、菌床シイタケ栽培施設)を利用したクリタケの栽培技術を紹介します。
【シイタケの菌床培地をそのまま利用】
シイタケの菌床培地は、広葉樹のオガ粉とフスマや米糠などの栄養剤を混ぜ、栽培袋に入れてブロック状に固めたものです。
クリタケ栽培の培地材料は、栽培瓶の試験結果によると、広葉樹オガ粉が適しています。そこで、シイタケの菌床培地にクリタケ種菌を植え付け栽培したところ、写真1のようなクリタケが発生しました。
クリタケ栽培は、シイタケの菌床培地がそのまま利用できます。
【長い培養期間は大丈夫】
菌床シイタケの培養は、栽培施設内で行い、期間は2〜9月の約8ヶ月間です。
クリタケの培養期間は、空調施設の場合5〜6ヶ月間とヒラタケの1ヶ月間やブナシメジの3ヶ月間に比べて長いことが課題となっています。この長い培養期間を菌床シイタケ栽培施設を利用することで解決できないかと考えました。そこで、クリタケを菌床シイタケと同じ施設で培養したところ、菌糸は順調に伸び、雑菌の発生はなく、良い菌床ができました(写真2)。
クリタケ栽培は、菌床シイタケの栽培施設が利用できます。
写真2 培養が完了したクリタケ菌床培地 【クリタケを発生させるには何が必要】
キノコ栽培では、キノコを発生させるために室内の温度を発生適温の15℃に設定したり、キノコの発生時期を揃えるために植え付けた種菌を掻き取るなどの発生操作を行います。
クリタケを発生させるためには何が必要か調べたところ、以下の発生操作が必要であることがわかりました。
- 栽培袋の上部を切り取ります。
- 菌床表面に植え付けた菌を掻き取ります。
- 掻き取った菌床表面に鹿沼土を覆土します(写真3)。
- 散水を週に2〜3回行います。
写真3 発生操作として袋上部を切り取り、菌掻き後鹿沼土を覆土した菌床培地 菌床シイタケ栽培施設でのクリタケ栽培は、シイタケの菌床培地並びに栽培施設が利用でき、シイタケと同じ作業スケジュールで栽培できることがわかりました。
収量がシイタケに比べて少ないなどの問題点は残っていますが、今後は生産者の方々に新しい食用キノコの栽培技術として技術移転していこうと考えています。
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