固形培地を使った菌床シイタケ栽培


(森林科学研究所)古川敦洋


■はじめに
 近年、県内の農山村地域を中心に菌床シイタケ栽培が急増しています。この菌床シイタケの培地は広葉樹オガ粉を用いるのが一般的です。しかし、将来広葉樹のオガ粉が不足し、値段が高くなることはあっても安くなるとは考えにくい状況にあります。一方、岐阜県でも戦後の拡大造林によって植栽されたスギ、ヒノキの大部分は間伐期をむかえ、相当量の間伐材が生産されています。このことから、間伐材等を利用したシイタケの菌床栽培技術の確立が望まれます。
 そこで今回は、高温・高圧処理して製造される固形培地の特性を生かし、間伐材(ヒノキオガ粉)を培地に使用してシイタケ栽培試験を行いましたので、その経過を報告します。

■固形培地とは
 形状は写真に示す通り、木質成型燃料であるオガライトと同様です。この固形培地は、栄養源を含み、乾燥、圧縮状態にあります。
 製造工程は図−1の通りで、オガライト製造機を改良した「固形培地製造機」によって製造されます。製造機の内部では平均3t/cm3の圧力と約300℃の高温によってオガ粉が圧縮され、棒状の固形培地が連続的に作り出されます。製造直後の固形培地は、比重1.2以上、含水率2.0%以下で、容積は5分の1程度に圧縮されています。

図−1.固形培地の製造工程

■固形培地の利点
固形培地を袋に入れて水を加えると、膨張してもとのオガ粉に戻る性質があります。これによって、培地の調製と袋詰め作業を簡単に行うことができます。
 この固形培地は、高温・高圧処理をする成型過程で、菌糸の生育阻害物質であるフェノール類やテルペン類が分解蒸発すると考えられます。その結果、広葉樹はもちろん、針葉樹についても利用することが可能であると考えられます。

■栽培試験
 試験に用いた菌床(種菌 北研600号、培地重量1.2kg)は、(1)ヒノキオガ粉100%(以下100%区とする)(2)ヒノキオガ粉50%、ブナオガ粉50%(以下50%区とする)の混合割合の異なる2種類の固形培地(栄養剤はフスマを容積比で20%混合)を使用しました。培養は温度22℃の培養室で120日間行い、発生は温度15℃、湿度80〜90%の育成室で行いました。また浸水は、一番発生及び二番発生後に20〜24時間行い3回収穫し、子実体の発生状況を調査しました。

■試験結果
 子実体の発生状況は表−1の通りとなりました。50%区における子実体発生量は、ブナオガ粉単独培地での培地重量1kgあたり210gの発生量を超え、244gでした。しかし、100%区では111gで50%区を大きく下回りました。また、子実体の規格割合は図−2に示すように、100%区では小型のきのこの割合が高くなりました。きのこ1個あたりの重量(個重)では、50%区が平均11.0gであったのに対して、100%区は8.6gと小さくなりました。

表−1.子実体発生状況

図−2.子実体の規格割合

一方、子実体の発生率は図−3に示すように、一番発生においては両試験区とも供試したすべての培地から子実体が発生しましたが、二番発生以降は100%区で発生率が特に低くなりました。

図−3.子実体の発生率

 以上の結果から、培地基材としてヒノキオガ粉単独での利用は難しいものと思われました。しかし、ヒノキオガ粉を50%混合した培地は、菌床シイタケの培地として利用可能であると考えられます。

■おわりに
 固形培地は高温・高圧処理を受けて成型されるため、内部にほとんど雑菌は生存していないと考えられます。したがって、比較的簡単な施設で殺菌を行うことができ、作業の簡略化が期待できます。
 今後はこのことを含め、固形培地のコストダウン、培地組成の改善等による収量の増加、質の向上等が実用化に向けての課題であり、さらに検討を行う必要があると考えます。


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