シイタケ原木としての中国産原木
(林業センター)井戸好美
岐阜県の林業 1997年8月号掲載
近年,シイタケ原木の生産量が減少してきたことに加え,過積載の規制等から輸送コストが上昇し,原木価格が著しく高騰してきました。このため,国内産より10〜20円安い外国産原木(中国産原木)が使われ始めてきました。
岐阜県においても平成5年頃から中国産原木が購入されはじめ,平成8年は56,000本と年々増加しています。しかし,中国産原木でのシイタケの発生量や形質に関する情報は十分ではありません。
そこで,中国産原木が我が国のシイタケ栽培用として十分利用できるかどうかについて検討しましたので紹介します。中国産原木とは
中国産原木とは,シイタケ栽培用の原木で中国大連近郊から輸入されているもののことです。中国名を「柞」(ツォモー)と言い,樹種は特定できていませんが,材表面は日本のコナラによく似ています。国内産原木と比較すると形状はほぼ同じで,太さが揃っていて真っ直ぐなものが多いですが,全体的に表面が黒ずんでいます(写真)。調査方法
平成7年3月9日にシイタケ秋山A−567号菌(オガ屑種菌)を接種し仮伏せ後,同年4月21日にホダラックシステム(原木を串刺しにして栽培管理する方法)と林内伏せ(林内で井桁積みにして栽培管理する方法)で伏せ込みました。
平成7年10月,平成8年4月,6月,10月の4回人工発生させ,7年11月〜8年3月までの間に自然発生したものについて,それぞれ収量を調査しました。シイタケ菌糸体の蔓延状況
シイタケ菌糸体の蔓延状況は,ほだ付き率(全面積に対するシイタケ菌糸体蔓延面積の割合)で表します。
接種7ヶ月(平成7年10月6日)後の木質部の表面及び断面のほだ付き率は,表−1に示す通りです。材表面では,各試験区とも98%以上とほぼ全体に菌糸が蔓延しました。また,断面では80〜90%と材表面に比べて若干低くなりました。
表−1 木質部の表面及び断面のほだ付き率(%) A:ホダラックシステム、B:林内伏せ
試験区 表 面 断 面 シイタケ菌伸長 未伸長 ほだ付き率 シイタケ菌伸長 未伸長 ほだ付き率 完全 不完全 完全 不完全 国内A 93 6 1 99 54 33 13 87 中国A 96 2 2 98 74 11 15 85 国内B 92 7 1 99 58 21 21 79 中国B 97 2 1 99 65 28 7 93 これは,断面には心材部があり,この部分はシイタケ菌糸体が伸長しにくいと言われていますので,ほだ付き率が低くなったと思われます。
このように,中国産原木は国内産原木と同じように接種後7ヶ月でシイタケ菌糸体が原木全体に蔓延します。子実体の発生量
子実体(きのこ)の発生量は,原木栽培の場合,原木材積(1m3)当たりの発生量で表します。
この結果は表−2に示すように,中国産原木,国内産原木ともほぼ同じ発生量でした。
また,管理方法により差が見られたのは,一番発生前(夏期)の水分管理が原因と思われます。ホダラックシステムには散水施設があり,これを稼働させていたため水分供給が十分であったため発生量が多かったと考えられます。
表−2 子実体の発生状況
1番:1995,10、自然:1995,11〜1996,3
試験区 供試ほだ木 材積当たりの発生量(kg/m3) 規格割合(%) 本数
(本)材積
(m3)1番
発生自然
発生2番
発生3番
発生4番
発生合計 L M S 2S 国内A 11 0.0772 51 3 14 8 2 78 11 43 34 12 中国A 11 0.0711 48 0 16 11 4 79 9 44 34 13 国内B 11 0.0837 19 3 6 10 3 41 15 41 29 15 中国B 11 0.0774 19 1 7 11 3 41 19 37 29 15
2番:1996,4、3番:1996,6、4番:1996,10
A:ホダラックシステム、B:林内伏せ子実体の規格割合
子実体の形質は規格(傘径の大きさ)の割合で表します。
ホダラックシステムで比較すると,中国産原木でも国内産原木でもM規格が最も多く全体の43〜44%を占め,次いでS規格の34%,L規格と2S規格の9〜13%とほぼ同じ割合でした。
また,林内伏せでもホダラックシステムに比べて若干L規格の割合が高いですが,ほぼ同様の傾向が見られました。
このことから,発生してきた子実体の規格割合も発生量と同じように産地間で差がないことが分かりました。おわりに
中国産原木を用いてシイタケ栽培を行ったところ,国内産原木と同じように利用できることが分かりました。
しかし,中国産原木を用いるには輸送段階での雑菌による汚染等の問題点が残されているので,今後はそれらについて検討すべきと考えます。
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