サクラの接ぎ木


(岐阜県森林科学研究所)中川 一


■はじめに
 現在「花の都ぎふ」推進の一環として岐阜県内の名桜樹「淡墨桜」、「臥竜桜」、「荘川桜(照蓮寺桜、光輪寺桜)」の4種類について、白鳥林木育種事業地で接ぎ木苗が育てられ、県下に毎年約2,200本が無料配布されています。この育苗については、当所が研究の過程で確立したサクラの接ぎ木方法が生かされています。また、これらの名桜樹はエドヒガン(種名)でありますが、この他にヤマザウラ系の中将姫誓願桜、揖斐二度桜、オオシマザクラ系の太田桜の天然記念物や園芸品種など20種類以上のサクラを接ぎ木して、研究所内に保存・育成しています。
 このような経験を基にしてサクラの接ぎ木方法について紹介します。

■接ぎ穂と台木の親和性
 主なサクラは、表−1のとおりです。一般に樹木の接ぎ木は、接ぎ穂と台木が同じ種である共台で活着が優れています。しかし、ヤマザクラ群のサクラは、いずれもオオシマザクラを台木として接ぐと良い活着が得られます。また、台木は、挿し木よりも実生苗の方が樹勢が強いためか良い活着となります。
 園芸品種のサクラをサトザクラと呼びますが、これらはいろいろな種の性質が混ざり合っていますが大部分はオオシマザウラの性質を強く持っています。従って、これらはオオシマザクラに接ぐと良い活着となり、これらには挿し木で容易に増殖する青肌ザクラと言う台木用品種に接いでも良い活着のものがあります。

表1 サクラの種類

■切り接ぎ

穂の調整
写真−1 穂の調整
穂を台木へ挿入
写真−2 穂を台木へ挿入
接ぎテープ巻き
写真−3 接ぎテープ巻き

■芽接ぎ(剥ぎ接ぎ)

穂の調整
写真−4 穂の調整
穂を台木へ挿入
写真−5 穂を台木へ挿入
接ぎ木終了
写真−6 接ぎ木終了

■接ぎ木のポイント
 接ぎ木のための道具は、ナイフ、剪定鋏、接ぎテープ、接ぎ穂調整用台、クーラー、鍬などの簡単な道具で実施可能です。また、サクラは、接ぎ穂と台木の形成層をあまり神経質に合わせなくても比較的良く活着し、慣れればエドヒガンで切り接ぎ60%、芽接ぎ70%程度の活着率が期待できます。
 しかし、活看を良くするためには、先ず第一に切れ味の良いナイフが必要です。次いで、実際に接ぎ木を始める時には、穂の調整、台木への切れ込み入れを十分練習してから行うことが必要です。


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