今が旬のキノコ!
−クリタケ−

(岐阜県森林科学研究所)井戸好美


写真1 クリタケ
写真1 クリタケ

クリタケの特徴
 クリタケ(N.sublateritium)は、秋も半ばを過ぎたころから出始めるものが多く、11月上旬の今が収穫の最盛期を迎える食用キノコです。クリやコナラなど広葉樹の倒木や根株もしくは土中に埋もれた木から発生します(写真1)。
 岐阜県では全県的に分布し、地方名もクリモタセ、アカモタセ、シモタケなどいろいろあるように、古くから親しまれています。ところが、このクリタケは毒キノコのニガクリタケとよく似ています。しかし、見分けるポイントを知っていれば区別することは簡単です。一つ目は色です。クリタケは、名前のとおり栗色(赤褐色)をしています。これに対し、ニガクリタケは、キノコ全体が黄色なので区別できます。二つ目は味です。ニガクリタケはすごい苦味があります。もし誤って食べ苦味を感じたらすぐ吐き出して下さい。
 食用としてのクリタケは癖がなく、歯切れの良さなどから天ぷらやすき焼きなど色々な料理に良く合います。また、最近話題になる機能性については、免疫活性化の強いキシロビオースやビタミンDの前駆体であるエルゴステロールなどの成分を多く含むことが報告されています

クリタケの栽培
 クリタケ栽培は、原木や根株を利用した原木栽培が行われています。栽培方法は、春にクリやナラなどの広葉樹原木にクリタケ菌を植え付け、林内に伏せ込みます。秋になり原木に菌がまわったことを確かめてから土中に埋め込み、翌年秋の発生を待ちます。
 岐阜県では東濃地域で原木栽培が行われていますが、生産量は極少ないものです。
 その原因は、クリタケを収穫するまでに一年半以上の期間がかかることや発生が年一回で、しかもその期間が二週間くらいに集中することが考えられます。
 そのため、クリタケを短期間で発生させ、周年栽培できる菌床栽培技術が必要です。また、菌床栽培生産者からは、新たなキノコとなるクリタケの栽培技術開発への要望が出されています。そこで、昨年よりクリタケ菌床栽培の試験研究を行っております。

菌床栽培への取組
 当所では、(1)ヒラタケやナメコのような栽培瓶による空調施設栽培や(2)菌床シイタケのような栽培袋による簡易施設栽培の研究に取り組んでいます。
 空調施設栽培では、県内の野生株の中から栽培瓶で写真2のようなクリタケを発生する菌株が見つかりました。しかし、クリタケはヒラタケのように菌を植え付けてからキノコを収穫するまでに2〜3ヶ月という短い期間では難しいことが分かりました。現在はこれらの菌株を用いて短期間で収穫できる技術の開発に努めています。

写真2 栽培瓶で発生したクリタケ
写真2 栽培瓶で発生したクリタケ

 簡易施設栽培では、培養が完了した培地をコンテナーに移し、鹿沼土等で覆土したところ写真3のようなクリタケが発生しました。

写真3 コンテナーで発生したクリタケ
写真3 コンテナーで発生したクリタケ

 このように、野生で発生したクリタケが人工的に栽培でき、発生までの期間も原木栽培に比べると短くなりました。今後は更に効率的な栽培技術の開発を行っていきます。また、そこで得られた技術を更なる栽培作目の一つとしてキノコ生産者にフィードバックしていきたいと考えています。


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