亜臨界水抽出を利用した葉酢液・木酢液・竹酢液の製造

(岐阜県森林科学研究所)坂井至通


●亜臨界水とは
 水は、温度を375℃以上、圧力を22MPa以上に上げると臨界点に達し、水(液体)でもない蒸気(気体)でもない極めて流動性の高い超臨界水流体となります。超臨界水はステンレス容器もボロボロにしてしまいます。

石川島播磨重工業ホームページより
図1 石川島播磨重工業ホームページより

 この臨界点より温度・圧力の低い熱水を亜臨界水といい、優れた成分抽出作用と激しい加水分解作用があります。今回開発した亜臨界水抽出装置は、温度は130〜400℃の範囲で、圧力は0.1〜1MPaですから、圧力鍋とかオートクレーブ装置(殺菌釜)より少し高い温度・圧力条件を設定しています。あまり強い条件では成分抽出より返って分解を起こしてしまいます。

写真 亜臨界水抽出装置
写真 亜臨界水抽出装置

●葉酢液・木酢液・竹酢液の製造
 従来の木・竹酢液製造法は、炭を乾留して造るときの煙を冷却して得ているため、樹木の幹や枝或いは竹の桿の不完全燃焼により、タール分やベンツピレンなど発ガン性を有する環境汚染物質が含まれています。このため、一般には乾留液を数ヶ月間静置させてタール分を沈降させて、木・竹酢液として市販しています。しかし、不純物を除去するための静置は、生産性を極端に低くするという問題点がありました。また、こうして得られた木・竹酢液は、土壌改良剤、防虫・殺虫剤、脱臭剤、媒染剤、食品加工時の処理剤、化粧品原料、入浴剤、水虫治療剤など幅広く使用されていますが、木・竹酢液には独特の臭いがあり、そのような臭いが消費量の拡大や用途の拡大を阻害する一因になっていました。
 今回開発した装置は、ボイラーからの水蒸気をさらに130〜380℃に加熱して過熱水蒸気とし、耐圧性容器の内圧を0.5MPa前後に維持して抽出し、抽出蒸気を冷却して凝結させています。このようにして得られた木・竹酢液は従来品と比べて、タール分や環境汚染物質を含まず品質の安定化が図られています。しかし、この抽出液は、広義に解して木・竹酢液の一種に分類しましたが、樹木や竹・笹の枝葉を原料にしているため、「葉酢液」とでも称すべき新規な液体です。この葉酢液は、平成15年度「森と木とのふれあいフェア」に展示をしたところ、本来もっている用途を充分に満足し好評を得ました。

写真 葉酢液
写真 平成15年度「森と木とのふれあいフェア」の展示風景

 岐阜県は森林資源が豊富にあり、建築材、パルプへの利用ばかりでなく、精油成分、木酢液、リグニンなど木材成分の利用や循環型社会に適応した製品つくり(エコ商品、グリーン購入法)に大きな期待が寄せられています。本装置を使えば、林道を使って林業の現場(山土場)に運搬することができ、これまで廃棄されていた枝葉からでも木・竹酢液をつくることができ、しかも香りのよい木・竹酢液を提供できるようになり、林業の活性化に有用であると考えてます。
 なお、本装置は平成14年度岐阜県新産業創出支援事業の補助金を水熱科学研究組合が交付を受けて共同開発しました。


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