森林調査の新技術
レーザプロファイラを森林調査で活用


(岐阜県森林科学研究所)古川邦明


■はじめに
 間伐や主伐を行う際に、搬出できる材の種類と本数が事前にわかると良いと思いませんか。しかしそのためには,立木一本毎に幹の形状を知る必要があります。さらに,事業地の詳細な地形が得られれば,集材作業等のシュミレーションを的確に行い,正確なコスト予測ができ、最適な作業法の選択が可能になります。
 調査研究等の目的では,立木一本一本の胸高直径と立木位置を測量して立木配置図や地形図を作成して作業解析等を行っていますが、森林の毎木調査には多大な労力と時間が必要です。胸高直径を測るだけでも,大変な作業です。さらに立木毎の幹の形状測定や地形測量を行う事などは、現実の林業の現場では非現実的と思われます。
 ところが最近我が国でもレーザ測量技術を応用したレーザプロファイラという装置による地形や建物等の計測が行われるようになりました。
 レーザプロファイラが毎木調査などの森林調査に使えれば、その効果は計りしれません。そこで毎木調査に使えないか実証試験を行いました。

■レーザプロファイラとは
 レーザープロファイラとは、レーザーを連続して照射し、対象物に反射して戻ってくるまでの時間と照射角度から、地形や構造物の形状を広い範囲で面的に計測することができる装置です。
 レーザプロファイラは航空機に積載して測定する方法と地上に設置して測定するものとがあります。航空機からは、三次元で地表情報が広範囲に取得でき,地形や都市部の建築群の計測等に使われています。一方地上設置型は,近距離から地表構造物や地形を短時間に高精度で計測できることから、遺跡調査などで使われてきました。
 今回はこの地上設置型での実証を試みました(図1)。これまでにも平坦な森林で胸高直径を計測した事例はありますが,起伏の多い傾斜地での事例はほとんどありません。傾斜地で胸高直径を算出するには各立木位置の地面高を知る必要があるためです。
 そこで、傾斜地において、地面の起伏と胸高直径を同時に計測する手法について検討しました。

図1 地上設置型レーザプロファイラ
図1 地上設置型レーザプロファイラ

■計測結果
 計測は、8齢級のスギ人工林で行いました。レーザプロファイラの精度比較のため、トータルステーションで立木位置と胸高直径を測定しています。また立木位置の測量結果から地表の形状も算出しました。立木密度は600〜900本/haでした。この林内3ヶ所にレーザプロファイラを設置し、各点で上下幅80度、横幅180度でレーザを照射して森林を計測しました。計測結果は3次元の位置情報を持った点データとして得られます。その測定点群を測定点からの距離別に濃度分けして表示したのが図2です。一見ネガ画像のように見えますが、多くの測定点の集合であり、白いほど近く黒くなるほど遠くを表しており、立木の位置や形が見て取れます。

図2 距離別階調図
図2 距離別階調図(明るいほど近く、暗いほど遠い)

■地表面をモデル化して立木形状を明らかに
 この点群には、地面だけでなく立木や下草からの反射による点が混在しています。そこで点群を任意のメッシュに区分し、そのメッシュ内の最低点を抽出して1次地形モデルを作り、この地形モデルを基準にしてさらに各点との位置関係を解析して地表面の数値モデルを作成し(図3)、この面より1.15〜1.25m(胸高位置)上部に分布する点群を抽出しました(図4)。立木に相当する部分では計測点が弧状に分布しています。そこで、その弧の両端の幅を測定しての胸高直径としました。同様の方法で枝葉が無い地上高8mまで、任意の地上高における幹の直径が計測できました。

図3 地表数値モデル
図3 地表数値モデル
図4 立木を表す点群
図4 立木を表す点群

■計測値の検証
 今回の調査では、設置点から約50m離れた立木の形状まで計測することができました。しかし立木までの距離が大きくなるに従って、計測値は実測値に比べ小さくなる傾向を示します。これは、設置点から離れるほど、手前にある立木の影に入る率が高くなるためです。そこで3点から計測を行い、その計測結果を統合して胸高直径等を算出した結果、測定対象林内の立木141本中127本(約90%)が計測ができました。計測値の誤差 の平均は約3cmでした。

■今後のとりくみ
 多くの現場では、この現場より立木密度が高く、地上レーザプロファイラで完全に計測できる本数は少なくなります。そこで幹の一部分の計測結果から全体を推定する方法の検討が必要でしょう。さらに他の測定手法との組み合わせについても検討し、レーザプロファイラによる簡易で正確な林分調査方法の確立のため、引き続き取り組んで行きたいと考えています。


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