新たな栽培きのこ
−タモギタケ−


(岐阜県森林科学研究所)井戸 好美


◆はじめに
 これからの季節は気候も寒くなり鍋物が美味しくなります。それに伴い、食材としてのきのこ類の需要も多くなります。しかし、現在栽培きのこの中で生産量が増加しているのは、マイタケだけで、シイタケ、ブナシメジは横這状態、ヒラタケにおいては、激減しています。
 そこで、それらに変わる新たなきのこの栽培が模索されています。岐阜県では、ハタケシメジやウスヒラタケなどの栽培が始まっています。また、新しいタイプのニューきのことして栽培され始めたのが黄色い色のタモギタケというきのこです。
 タモギタケ(Pleurotus cornuopiae)は、ヒラタケ、ウスヒラタケと同じシメジ科ヒラタケ属のきのこで形はヒラタケに似ており、色が鮮黄色〜淡黄色をしていることから、黄金(ゴールデン)シメジと呼ばれています。
 人工栽培は以前から北海道や東北地方で行われており、北海道が全生産量の90%以上を占めています。我が中部地方ではほとんど栽培されていません。

写真 タモギタケの発生状況
写真 タモギタケの発生状況
 左:フスマ区  右:コメヌカ区

◇岐阜県のタモギタケ栽培
 現在、西濃地域で4名の生産者が栽培しています。栽培は平成11年から始まり、培養が完了した菌床(発生させるばかりの菌床)を業者から購入し、自身のハウス等できのこを発生させる方式です。しかし、この栽培方式は、培地が2.5Kg以上と非常に重くかつ大きいことから、大変広いスペースが必要となり、作業効率も悪いのが現状です。栽培者の方々も自分自身で培地作成からきのこの収穫までの一連の栽培を手がけたいと考えております。また、食品としては、栽培がまだ始まったばかりで一般に出回っていないことから、消費者にとっての認識はほとんどありません。一般にイメージする食用きのこの色合いは黒か灰色もしくは白色であり、傘が黄色のこのきのこを始めて見る方には敬遠されがちです。身近のものに意見を聞いても美味しそうという感想は聞けませんでした。その悪いイメージを解消するためにはPRが必要です。現在岐阜県と岐阜市が共同で支援している食品販売のベンチャー企業「ニューピアーズ」が中心になってタモギタケを食材としてPRしようと活動しており、積極的に生協や料理店、量販店等に売り込むなど支援体制は整っていることから、栽培きのことして大変有望と思われます。

◆栽培効率化試験
 効率的な栽培方式の確立を目指してヒラタケ栽培同様に800mlの栽培瓶を用いたきのこの発生状況等を試験しましたので紹介します。
 今回は瓶栽培における基本的な試験項目である培地の基材(ブナオガ粉、スギオガ粉)、栄養剤(フスマ、米糠)等を検討しました。また、タモギタケとして市販されている四品種について比較試験を行いました。

◇オガ粉は何がよい?
 きのこ栽培の中で最も重要なのが培地です。その培地の基材として何が利用できるのかを明らかにするため、シイタケ栽培で使われている広葉樹のブナオガ粉とヒラタケ、ブナシメジ栽培で使われている針葉樹のスギオガ粉を用いて検討しました。
 その結果、ブナオガ粉とスギオガ粉を1対1で混合した培地できのこが最も多く発生しました。また、ヒラタケ栽培同様スギオガ粉だけでも十分きのこが発生することが分かりました。(図−1)

図1 オガ粉別発生状況

◇栄養剤の割合は?
 栄養剤(フスマ)についてオガ粉に対する割合を変えて検討しました。
 その結果、栄養剤の割合はオガ粉10に対して4程度は必要であることが分かりました。(図−2)
 また、フスマと米糠で比較したところ、発生量は変わりませんでしたが、発生してくるきのこの形態がフスマの方がろうと状になりやすい傾向が見られました。(写真)

図2 栄養剤の混合割合別発生状況

◇品種による違いは?
 市販されているA〜Dまでの4品種について、瓶栽培による同一条件下での比較試験を行いました。その結果、きのこの形態に差は認められませんでした。また、菌糸が瓶内に蔓延する期間はCが17日と若干長かったものの、他の品種はほぼ16日でした。しかし、発生量は一番発生が全ての品種で60〜70gでしたが、ヒラタケ栽培同様に2番発生を試みたところ、AとDでは全ての培地からきのこが発生しましたが、BとCでは未発生のものが多く見られました。このことから、品種によっては発生が1回しか見込めないことが分かりました。(表−1)

表1 品種別発生状況

 以上の結果から、瓶栽培において十分キノコが発生することが分かりました。また、ヒラタケ栽培に比べて短い期間で培養ができ、品種によっては2回収穫が可能でした。

◆おわりに
 岐阜県としてもこのきのこを健康に役立つきのこ(普及推進キノコ)の一種として位置づけ、普及、生産及び消費拡大に努めています。今後は普及サイドとも連携をとりながら、普及活動の一環として情報を提供していきたいと考えております。きのこの栽培等について御質問がありましたら、筆者までお問合わせ下さい。


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