ナラ枯れ被害が拡大!

(岐阜県森林科学研究所)大橋章博


 昨年この紙面で、カシノナガキクイムシによるナラ類の集団枯損被害(以下、ナラ枯れ)が揖斐川流域から長良川流域に拡大したことを紹介しました。今年になって、被害地域は急激に拡大しています。そこで、今回はナラ枯れの現況と防除対策について紹介します。

岐阜県におけるナラ枯れ被害の発生状況(H17)

【被害は低山地に拡大】

 昨年、ナラ枯れが初めて発生した関市板取地区(旧板取村)では、地区全域に被害が拡がりました。被害地域はさらに南方に延び、関市洞戸(旧洞戸村)、美濃市、関市、岐阜市、各務原市に達しています。このうち、関市、岐阜市、各務原市では、市街地と近接する低山地に被害が発生しています。

 一方、目を北に転じると、白川村への被害の侵入が確認されました(普及コーナーで詳述)。

 被害の拡大とともに被害を受ける樹種にも変化がみられました。ミズナラが最も枯れやすいことに変わりはありませんが、今年はコナラの枯死が各地で目立ちました。また、低山地ではミズナラに替わって、アベマキ、アラカシ、ツブラジイに被害がみられました。

【防除対策は?】

 現在、ナラ枯れの防除手法としては、NCSくん蒸剤の注入による駆除と粘着剤の散布による予防という選択肢しかありません。これらはいずれも単木的な防除法で、広大な山の前では無力に思えます。しかし、このまま何もせずに手をこまねいていては、被害はどんどん拡大していくだけです。

 では、どうすればよいのでしょうか。

 今年新たに被害が確認された林分で調査した結果、被害が発生して2〜3年の間は、被害は数本のレベルで推移することがわかりました。この時期であれば、単木的な手法であっても実施可能で、効果も期待できると思います。

 そのためには、被害の先端地域で被害の監視体制を整えておくことが重要になります。ナラ枯れの発生を発見したら、枯死木に対してはNCSくん蒸処理を、その周辺の生存木には粘着剤による予防処理を実施する。当座はこれを徹底することで被害の拡大を食い止めていくしかないと思います。

写真.NCSくん蒸処理
NCSくん蒸処理
写真.粘着剤による予防
粘着剤による予防

研究・普及コーナー

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