森林調査にデジタル機器を使う
レーザレンジファインダーによる森林調査
（岐阜県森林科学研究所）古川邦明
デジタル技術は年々進化を続け、とどまることを知らないようです。森林管理や林業の現場にもこの波は押し寄せています。先月号で紹介しました、「シルブの森」のようなソフトウエアだけでなく、現地調査でもデジタル機器が使われ始めています。森林科学研究所では、GPSを始めとしたデジタル機器による森林調査方法等について検討しており、このコーナーでも以前に紹介しました（2003.9）。今回はレーザレンジファインダーについて紹介します。
◆レーザレンジファインダー
レーザレンジファインダーは、光波で距離を測るハンディタイプの装置です。電子コンパス等を内蔵した機種もあり、今後森林調査での利用が期待されます（写真１）。
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◆森林調査に使ってみました
○森林測量
森林測量では、測点間に立木や沢等障害物が邪魔をして間縄を真っ直ぐに張れず、距離の測定に手間取ることがよくあります。その点、光波測距なら測点さえ見通せれば、瞬時に測定できます。また、手持ちで使えますから、コンパスの設置手間も省け、測量が素早く出来るはずです。そこで、コンパス内蔵機による境界測量の作業性について調べてみました。
図１にその結果を示します。比較のため従来のコンパス測量と距離測定だけを光波を用いた場合の作業性も調べました。
いずれも２人一組で森林内を測量し、１点当たりの測定に要した時間を移動時間、機器設置時間、測定時間の３要素に区分して比較しました。
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コンパスと間縄で行った場合は、１測点当たり３分近く要していますが、レーザレンジファインダーでは１分以内で計測出来ています。これは、手持ちで行っているので、従来のように三脚を設置する手間が必要ないこともありますが、移動と測定時間共に所要時間が大幅に短縮しています。また距離だけをレーザレンジファインダーで測った場合でも、１測点当たり１分程度短縮しています。森林内で間縄を真っ直ぐに張るための手間が大変かが判ります。
コンパス内蔵機ははまだ高価ですが、距離だけ測るものなら５万円前後で購入可能です。間縄を光波測距にするだけでも、３割以上の作業効率向上が期待できます。
○立木調査
立木調査では、樹高の測定に一番手間どります。レーザレンジファインダーは、専用の反射板が無くても、距離を測ることができますから、１人でも、梢の先端が見える位置まで自由に移動して測れます。距離と仰角から高さを計算しデジタル表示できる機種もあります。またコンパス内蔵器なら同時に立木位置も測って立木配置図や構造物、地物の測定が同時に行えます。
○測定精度は？
樹高については、良好な結果がえられました。ただし、測定する立木に近づきすぎても、離れすぎても誤差が大きくなります。木の高さと同じ程度離れて測定するのが良いようです。
また、測量精度を検証するため、周囲測量を行って閉合比を調べました。コンパス内蔵機の手持ち測定では、1/80〜1/200となりました。同じ場所をコンパスと間縄、さらにコンパスと光波で測量したところ、いずれも1/1000以下の閉合比でした。
本体をポールに取り付けて測定すると測定精度は多少向上します。しかし、本体に電子コンパスを内蔵した機種の特性として、上下に大きく傾けた状態での方位角測定は精度が落ちてしまいます。このため、急傾斜地での測量精度向上には限界があるようです。
これを解消するため、電子コンパスを外付けにした機種もあります。さらに三脚を使えば（写真２）、急傾斜地でも安定した測量が出来ますが、機動性は失われます。目的に応じて機種選択する必要があるでしょう。
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◆展望
レーザレンジファインダーを使えば、森林内では間縄の取り回しが大変で、難しかった放射法での測定が簡単に出来るようになります。放射法は森林調査で大変重宝するはずです。
ところで、当所では森林測量システムを開発し、ホームページからダウンロード出来るようにしています。このシステムは周囲測量に対応し、作図にCADを使っています。CADの操作を習得すれば、放射法からの図化は簡単にできますが、誰でも使えるわけではありません。そこで、放射法での森林調査にも対応できるよう、森林測量システムも改良していきたいと考えています。
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