間伐の重要性
東濃地域のヒノキ林における林分調査結果をもとに

(岐阜県森林科学研究所)茂木靖和


 岐阜県はヒノキ素材生産量が全国1位(H13)、ヒノキ人工林面積が全国2位(H7)で、「東濃ヒノキ」というブランドを有する全国でも屈指のヒノキ産地です。
 東濃地域のヒノキ林において、健全な林分の維持に不可欠な間伐が遅れていたり、間伐が行われないケースが多く見受けられます。

■間伐が遅れると
 間伐が遅れた林分は、過密状態になり樹木の生育が抑制されます。このため、幹や根を十分に発達させることができずに細い木が林立し、雪害や風害などの気象害に対する抵抗性が低下します(写真)。

冠雪害(根返り)の発生したヒノキ林

■東濃地域のヒノキ林の混み具合
 図1は東濃地域のヒノキ林における林齢と収量比数の関係を示したものです。収量比数は林分密度の指標となるもので、収量比数が0.8より高い林分では、通常、間伐が必要となります。
 東濃地域では収量比数0.8を超えるヒノキ林が多く存在します。この中には収量比数0.9を大きく超える過密林分も含まれています。

図1.林齢と収量比数の関係

■間伐と大径材生産
 間伐には個々の植栽木の競争を緩和して、幹を太くする効果があります。つまり、間伐により立木密度を低下させると、幹の肥大成長の促進が期待できます。
 図2は東濃地域の60〜99年生のヒノキ人工林における立木密度と平均胸高直径の関係を示したものです。立木密度が高いと平均胸高直径が小さく、立木密度が低いと平均胸高直径が大きいという関係があることがわかります。また、それぞれの林齢階はお互いに重なりあって、一つの曲線状に分布していることがわかります。これは平均胸高直径が林齢よりも立木密度の影響を強く受けていることを表しています。つまり、伐期が長くなり林齢が高くなっても立木密度が高いままであれば、胸高直径の大きい大径材は生産できないことを意味しています。間伐は大径材生産に欠かすことのできない施業といえます。

 間伐の効果は、植栽木の競争を緩和するだけではありません。図3は平均胸高直径が19cmであったヒノキ林の胸高直径階分布を示したものです。この林分で間伐を行った場合、間伐木の胸高直径は14cm以上になります。この大きさは利用径級に達しています。つまり、この林分では間伐により、間伐木の収穫と残存木の成長促進が期待できます。

図2.60〜99年生のヒノキ林における
立木密度と平均胸高直径の関係
図3.直径階分布

■今後の間伐の重要度
 東濃地域のヒノキ人工林は4〜9齢級が全体の多くを占めています。現在、伐期を遅らせて大径材生産を目標とする長伐期施業を指向する傾向が強まっており、今後急激に齢級の高い林分の増加が見込まれます。このように、大径材生産を目標とする林分が増えれば、間伐の重要度は今後益々高まると思われます。
 また、東濃地域ではヒノキの大径木が土地の生産力が高い林地だけでなく、低い林地においても成立しています。このようなヒノキ林には、立木密度が低いという共通点がありました。このことから、ヒノキの大径材生産は間伐により立木密度を低くすれば、土地の生産力の低い林地においても可能と思われます。

■おわりに
 当研究所では、間伐の設計を支援するために、東濃ヒノキのシステム収穫表を作成しました。次号では、このシステム収穫表を紹介します。


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