山の珍果サルナシつくり

(経営特産科)宇次原清吉


当研究所では、苗木の配付・販売は行っておりません。(2002.08.27)

■サルナシとは

(1)分布及び特徴
 サルナシとは日本全土のの各地の山地にはえる雌雄異株(希に雌雄同株)のマタタビ科の落葉つる性木本で、枝は褐色で長く伸び他の樹木にからみつく。葉は互生し、だ円形〜長だ円形で長さ10cmくらい、5〜6月頃梅の花に似た白い花をつける。開花後2〜3cmのだ円形から球形の液果ができ、秋に熟す。
 名の由来は、果実が梨に似ており、サルが食用とする梨ということで"猿梨"の名が生まれた。また、クマはこのみ実をいっぱい食べてエネルギーをたくわえて冬眠にはいるといわれている。スーパーなどに出回っているキウイフルーツはサルナシの仲間で中国原産のシナサルナシをニュージーランドで品種改良し鶏卵くらいの大きさとすることに成功した果物である。ただし、キウイフルーツには毛がありサルナシにはない。


図1 サルナシの花(雌)


図2 サルナシの果実

(2)人気の原因
 緑色をして甘い香りを放つサルナシの果実は『山の珍果』といえよう。若い果実は堅くて酸味が強く、果実酒原料に適しており果実酒の中でも高級品扱いされている。 果実は栄養価がたいへん高く、ビタミンCはレモンの約10倍、さらにタンパク質分解酵素を大量に含み、疲労回復、強壮、整腸、補血などの効能が有るといわれている。 若芽にはビタミンC、B1、B2が多く、生で食べたり健康茶としても利用されている。 また、ツルは生け花材料としても利用されている。果実は、生食するだけでなく、加工用として、ワイン、ジャム、ケーキ、フルーツヨーグルト、寒天ゼリー、果汁などが有望と思われる。

(3)栽培の現状
 サルナシの栽培は、最近、2〜3の県及び一部の愛好家によって行われるようになったが、まだ量産するには至っていない。 今後、大幅な需要の増加が考えられ、一部の地域、または野生からの採取では需要を満たすまでには至らず、大型産地つくりが望まれる。

■サルナシつくりの試み


図3 露地ざし発根状況

(1)適地の条件
 サルナシは寒さには強いが、浅根性で乾燥に弱い。そのため半日陰地で、腐食質に富み保水力のある土壌が好ましい。

(2)増殖の試み
 苗木は市販されているが、地域に自生している優良野生種を山取りするか、さし穂を採取して増殖する。 増殖法には実生、接ぎ木、挿し木などがあるが、同一形質の個体が一時に得られ、技術的にも簡単な挿し木方法がよい。 平成7年度当試験場業務報告で報告したとおり、鹿沼土による温室での挿し木発根率は良好であった。 平成8年度は露地で、挿し床の土を変えて挿し木試験を行った。 結果は表1のとおりである。床の土壌及び前年枝、当年枝に関係なく発根率は良好であった。

表1 サルナシ露地さし発根試験結果
条件本数発根本数発根率(%)備考
赤玉土10前年枝222091挿し木日:96.7.5〜23
期間:87〜105日
挿し穂の条件
・長さ:約26cm
・直径:約8mm
当年枝99100
赤玉土
バーミキュライト
5
5
前年枝222195
当年枝77100
赤玉土
バーミキュライト
鹿沼土
4
3
3
前年枝2222100
当年枝8675
鹿沼土10前年枝211886
当年枝88100

(3)果実付き挿し木の試み
☆果実を見て楽しむ☆
 果実を付けたまま挿し木を行った。結果は表2のとおりである。 最後まで落果せず果実の残った本数率は発根促進剤を使用した系統1、2がいちばんよく、発根率もよかった。 写真は、6月下旬果実を付けた穂木を採取し24時間水揚げ処理した後挿し木し、8月上旬に掘りとったものである。 これをこのまま鉢入れし果実付き盆栽として楽しむのもおもしろい。

表2 サルナシ果実付き発根試験結果
条件本数果実残存本数率(%)発根本数率(%)摘要
系統1発根促進剤有13131001292挿し木日:96.6.25〜7.23
期間:52〜100日
挿し穂の条件
・長さ:約28cm
・直径:約6mm
発根促進剤:ルートン
発根促進剤無1311851185
系統2発根促進剤有101010010100
発根促進剤無10990880
系統3発根促進剤無1154511100
系統4発根促進剤有1884418100

※この記事は,農薬取締法改正前に書かれたもので,現在はサルナシに使用することはできません(2016.04.04)

■今後の課題
 栽培の現状でも述べたように、今後需要の増加が予想され、加工原料として期待されるので量産を図ることが肝要である。 またそれに伴い、加工目的に応じた優良系統の選抜及び増殖法の確立が急務である。


図4 果実付き挿し木発根状況


図5 盆栽風にしたもの


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