スギ丸太の明るさで仕分けた乾燥時間短縮の効果

(岐阜県森林研究所) 富田 守泰



スギは生材時含水率のばらつきが大きいため、製材直後の重量選別で、乾燥時間の短縮を図っている工場が全国各地に出てきました。しかし選別の実施は複数ロットで乾燥ができる一部の大規模な工場でしかできません。 県内では、合板工場向けに市場や素材生産の隣接土場などで原木選別の機会が増えてきています。そのような現場で製材用良材選別の指標として黒心材を除くことが任意に実施されているようです。その乾燥時間短縮効果はどの程度なのでしょうか。 そこで、中小製材の乾燥工場向け原木を心材の色で仕分けして、原木から製材された柱材の乾燥時間の短縮効果を測定したので報告します。

試験の流れ

対象にしたスギ原木は、郡上市白鳥地域から生産された平均的な正角木取りの4m材49本です。椪積状態で元口の心材明度を色差計にて測定し、指標板(図1)を基準に目視で2つに分けました(明度30未満(全体の1割弱)、30以上)。選別の時期は伐採後時間が経過しているため、伐採時の明度から変化していると想定されたので、正角の製材直後に元口端50p内で切断して、伐採時と想定される切断面の明度を測定しました。

乾燥は温度120℃湿球温度90℃で24時間のドライングセット後、温度90℃湿球温度60℃一定として、一定時間おきに全数の重量を測定しました。測定毎の重量と推定全乾重量から測定時毎の含水率を把握し、8割が20%以下になる時点で乾燥を終了しました。

3日間の養生を経て、両木口から1m地点で全乾法による含水率測定を行い、終了時の含水率を確定して乾燥経過を算出しました。当初明度を30未満で除去選別した材と選別しない場合とで比較しながら、乾燥時間の個体数分布の経過をグラフ化しました。

     
図1 明度30、色相と彩度は測定平均値とした指標板
  
図1 明度30、色相と彩度は測定平均値とした指標板

伐採後経過日を選ばない指標板明度

切断面の明度を伐採当初の明度とすれば、木口心材の明度分布は、市場で選別するまでの期間(1〜4週間)で大きく変化しました(図2)。しかし、伐採時の明度と椪積時の明度の関係(図3)によれば、目視による選別の指標である明度30前後は変化していません。つまり明度30の指標板であれば、市場へ搬出される通常の期間内での選別結果への影響は少ないと思われました。

図2 椪積時と切断面の木口心材明度分布
図2 椪積時と切断面の木口心材明度分布
図3 椪積時と切断面の心材明度関係
図3 椪積時と切断面の心材明度関係

乾燥時間分布を求めて9割が目的含水率以下になる乾燥時間の比較

ドライングセット後の乾燥スケジュールは一定温湿度で設定されるため、すべての試験材が指数曲線上に推移することを利用して目的含水率D20以下になる時間を全量推定しました(図4)。 平均乾燥時間は16時間の短縮でした(図5)。乾燥時間の頻度分布は正規分布でしたので、JASに基づき全体の9割がD20に該当するまでの乾燥時間を選別除去の有無別に推定した結果、21時間の乾燥時間の短縮になり、その内、菌によるものと想定される変色材や部分的な黒心材を除去しない場合(原木選別2)は28時間程度の乾燥時間の短縮が図られました(図6)。燃料費に換算するとそれぞれ5.6%、7.6%の減少と算出されました。

図4 全個体乾燥経過と推定値
図4 全個体乾燥経過と推定値
図5 D20までの推定乾燥時間分布
図5 D20までの推定乾燥時間分布
図6 乾燥時間に対する含水率20%の比率
図6 乾燥時間に対する含水率20%の比率