崩壊危険地がわかりやすい地図を道づくりに活用する(その2)

(岐阜県森林研究所) 臼田寿生



【はじめに】

森林内に作設する路網の損壊を防ぐためには、損壊が発生しやすい崩壊危険地を的確に把握し、それらを考慮した路線計画を行うことが重要です。

実際に県内の林業専用道および森林作業道で発生した85箇所の損壊箇所を崩壊危険地別に分類してみると、すべての損壊箇所は何らかの崩壊危険地に該当し、特に、0(ゼロ)次谷※1、地すべり地形、断層地形での発生割合が高いことが明らかになっています(図1)。

※1「0次谷」は明瞭な流路を持たない谷頭の集水地形

本誌759号では、崩壊危険地形がわかりやすい地図として、当所が提供している「傾斜区分図」と「CS立体図」を紹介しましたが、今回はインターネットなどから手軽に入手できるその他の地図情報について紹介します。

  
図1.損壊発生箇所の崩壊危険地別の該当割合
図1.損壊発生箇所の崩壊危険地別の該当割合

【地すべり地形分布図】

地すべり地形分布図は、国立研究開発法人 防災科学技術研究所が空中写真の実体視による地形判読を通して、地すべり地形の外形やその分布などを示した図面です。この地すべり地形分布図によって、過去に地すべり変動を起こした場所やその規模、変動状況などを把握することができます。

地すべり地形の中心付近は傾斜が緩い場合があり、道を作設したくなりますが、地すべり地形周辺は崩れやすくなっているため注意が必要です。

【活断層図】

 活断層図は各種機関から公開されていますが、全国を対象とした詳細なものは、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)が公開しています。活断層をはじめとする断層周辺では、地盤の破砕や風化が進んでいるとともに、地下水が集中している場所もあり、崩壊が発生しやすくなっています。

【地質図】

地質図では、地下にどのような種類の石や地層が分布しているかを知ることができます。地質図も各種機関から公開されていますが、産総研が公開している地質図は、全国を対象に詳細に作成されています。

路線計画の際に参照する地質図はできる限り縮尺が詳細なもの(5万分の1)が望ましいですが、地域によっては20万分の1の縮尺でしか作成されていないところもあるため、可能な範囲で詳細なものを参照しましょう。

地質図からわかる崩壊危険地の情報は、地質境界※2だけではなく、活断層以外の断層も記載されているため、必ず確認しておきましょう。

※2「地質境界」では隣接する地質の強度や透水性などが異なるため崩壊が発生しやすい

【おわりに】

今回紹介した地図情報は、いずれも産総研がインターネットで公開している「地質図Navi」により複数の情報を重ねて確認することができます(図2)。地質図Naviはスマホにも対応しているため、通信可能なエリア内であれば現在位置での情報を確認することができ、とても便利です。県内には地すべり地形や断層は少ないと思っていらっしゃる方には、ぜひ一度確認していただきたいと思います。

各種地図による情報と現地での情報を照らし合わせながら、的確な地形判読を行い、壊れにくい道づくりを進めていきましょう。

  
図2.地質図Naviで複数の地図情報を重ねて表示した例
図2.地質図Naviで複数の地図情報を重ねて表示した例