減圧して木材を速く乾かす

(岐阜県森林研究所) 土肥 基生



はじめに

スギやヒノキの大径材から製材した平角材を、木造住宅の構造材として使う事例が増えてきました。しかし、断面が大きいことや、特にスギの場合は初期含水率が比較的高いため、乾燥には時間が掛かります。乾燥を短時間で仕上げるには温度を上げればよいのですが、極端な操作を行うと、木材の内部で割れが発生したり、強度自体の低下が危惧されます。そこで当所に平成27年1月に導入した減圧式木材乾燥機を使って、材料への損傷が少なく、かつ乾燥速度を速くできる減圧式木材乾燥技術の開発を行っています。

減圧下で木材の乾燥速度を保つには

減圧すると乾燥が早くなるのは沸点が下がるからです。しかし、木材から水分が蒸発する時に気化熱が奪われ木材自体の温度が下がるため、外から熱を与えないと乾燥が進みにくくなります。当所の装置は一般的な蒸気式乾燥機と同じように釜の中で熱風を循環させて木材に熱を伝えています。この方法では、減圧して空気が薄くなった時に、減圧しない場合と比べて熱が伝わりにくいことが危惧されます。このため、乾燥機には一定の時間間隔で復圧(気圧を外気圧に戻す)して木材の温度上昇を促す機能も備わっています。しかし、乾燥速度に与える影響はよく判っていません。

最適な減圧条件は?

スギの平角を用いて異なる減圧条件での乾燥速度等を比較する試験を行いました。この結果、一定間隔で単に復圧する(図1の「復圧A」)だけでは乾燥速度の向上効果はなく、復圧時に設定温度を10〜20℃上乗せした場合(「復圧B」)には、平角の断面中心部の温度が高く保たれ、乾燥日数も短縮されました(図2、図1)。しかしこの条件では、乾燥後の材色が全体的に暗くなり(図3)、減圧乾燥のメリットを活かせない結果となりました。

これらを勘案すると、熱風循環式の減圧乾燥を行う場合は、復圧工程は入れずに常時減圧で乾燥させたほうがよいという結論になりました。

この試験ではスギの心去り平角材を対象としましたが、今回の結果はスギの心持ち平角材や同じ針葉樹であるヒノキにも適用できると考えています。県産材製品の高品質化に向けて減圧乾燥スケジュールの開発を更に進めていきます。

     
図1 乾燥途中で発生した表面割れ 図2 減圧条件別の材温の推移
図1 乾燥途中で発生した表面割れ 図2 減圧条件別の材温の推移
試験材はスギ心去り平角(130×210mm)、乾燥温度80℃〜90℃ 測定箇所は平角断面の中心部
図3 減圧条件別の心材色の頻度分布 図4 試験材の木取り
図3 減圧条件別の心材色の頻度分布 図4 試験材の木取り
復圧Bでは、明度の値が低い方に分布しており、
心材部の色が暗くなったことを示している。