低コストで丈夫な道づくりのために注意すること

(岐阜県森林研究所) 臼田寿生



はじめに

木材生産や森林管理を効率的に行うために作設される林業専用道(以下、専用道)および森林作業道(以下、作業道)は、作設コストを抑制するため、構造物を作設しない「土構造」を基本とすることが国の指針に定められています。このような土構造の道は、低コストで作設できる反面、崩壊への耐性が低くなるため、作設場所や方法を誤ると災害を発生させる恐れがあります。

そこで、森林研究所では、低コストで崩れにくい丈夫な道づくりのための注意点を明らかにすることを目的として、既設の専用道および作業道における崩壊箇所の調査を行っています。今回はこのうち、幅員が広く崩壊の発生リスクが高い専用道の調査で明らかになった道づくりの主な注意点について報告します。

崩壊箇所の調査

調査は平成22〜26年度に県内で開設された専用道のうち17路線で実施しました。なお、この調査対象には、全幅員が3mを超える作業道についても専用道規格相当として含んでいます。

調査内容は、車両の通行に支障をきたす崩壊箇所について、道路構造や斜面勾配など、様々な項目を調査し、これらの調査項目と崩壊発生との関係を検討しました。


【低コストで丈夫な道づくりための注意点】

1 切土のり面の高さを低くする

切土における崩壊は、切土のり面の高さが2m以上の箇所で発生していることがわかりました(図‐1)。このため、切土のり面は極力低くし、2m以上にならないようにすることが重要です。

  
図-1 切土のり面の高さと崩壊発生箇所数
図-1 切土のり面の高さと崩壊発生箇所数

2 安定地盤に盛土をする

 盛土の崩壊は、全て基礎処理が不適切な箇所で発生していました。基礎処理が不適切な箇所の具体例としては、作設時に伐採、集積された木の幹や枝葉を基礎として、その上に盛土が行われていたものでした。このような方法で作られた盛土は、幹や枝葉の腐朽の進行にともなう不安定化が避けられません。このため、盛土は地山の段切りなど適切な基礎処理を行った安定地盤に行うことが重要です。

3 路面排水を分散させる

 路面水の排水箇所における崩壊の有無と路面水の集水区間距離(路面水が集まる区間の路線延長)の関係を見ると、崩壊が発生した箇所の集水区間距離は、排水施設の維持管理不足などにより、平均で約160mと長大になっていました(図‐2)。このため、排水施設はその機能が継続的に発揮できるよう適切な維持管理を行うことが重要です。

  
図-2 崩壊発生状況と路面水の集水区間距離
図-2 崩壊発生状況と路面水の集水区間距離
●は平均値、バーは最大値と最小値

おわりに

以上、低コストで丈夫な道づくりための注意点を提示しましたが、1の切土と2の盛土に関しては、国の指針にも示されているとおり、まずは30度以上の急傾斜地での作設を避けるとともに、幅員を拡げ過ぎないことが重要となります。やむを得ず急傾斜地で道をつくる場合には、構造物や法面保護などの崩壊防止対策が必要となり、低コストでの作設が困難となりますので、費用対効果の検討も十分に行いましょう。