森林総合研究所での長期研修報告

(岐阜県森林研究所) 土肥 基生



岐阜県では今後の森林資源の充実にともない木材利用量の拡大が課題となっており、木材加工の分野では高品質な県産材製品の供給が求められています。中でも「木材乾燥」は県産材品質向上に欠かせない分野であり、森林研究所でもこの分野の取り組みを強化する必要があります。
 このたび、平成25年9月9日から12月6日までの3か月間、茨城県つくば市の(独)森林総合研究所木材乾燥研究室で、木材乾燥技術や試験方法ついて研修を受けましたのでその内容を報告します。


1 木材乾燥スケジュールの簡易決定法(100℃試験法)

木材の人工乾燥で初めての樹種や、従来とは異なる性質の材を取り扱う場合には、どのような乾燥スケジュールを適用すべきか迷いますが、100℃試験法により比較的短時間に乾燥スケジュールを決定することができます。試験方法としては、厚さ2p、幅10p、長さ20pの試験材を用意し、100℃に温度調整した小型の乾燥機に入れ(写真1)水分がなくなるまで乾かします。このときの乾燥時間や木口割れ・内部割れ、断面の変形を観察し、これらの程度からその樹種に合った乾燥スケジュールを決定します。

この試験法は針葉樹・広葉樹の板材に適用できます。今後、岐阜県では大径化する県産材から製材したラミナや心材含水率の高い板材などにこの試験法を適用できるのではないかと思います。

写真1 板材の100℃試験
写真1 板材の100℃試験

2 ドライングセット量の測定法

近年、針葉樹構造材の人工乾燥では、乾燥初期の段階で120℃程度の乾燥工程を組み入れるドライングセット法が普及し、背割りの無い芯持ち材でも表面割れを抑制して乾燥させる方法が採られるようになりました。しかし、樹種や材料の性質によっては表面割れ抑制効果がうまく発揮できない場合もあります。また、ドライングセットの表面割れ抑制効果の判定は、乾燥材の表面割れの有無を目視で判断することが一般的です。
研修では、ドライングセット量という指標を用いて、表面割れ抑制効果を数値的に判定する方法を学びました。乾燥後の材料の表面を5mmにスライス(写真2)し、この切片の収縮率等からドライングセット量を求めるものです。材料を切断する必要があるため生産ラインの中で取り入れることはできませんが、現在実施している、あるいはこれから試そうとしている乾燥スケジュールの中のドライングセット工程の時間や温度条件が適正かどうかを判断するのに役立てることができます。

写真2 スギ製材のスライス片
写真2 スギ製材のスライス片

このほかに、木材の高周波真空乾燥法や木質ペレットの品質評価の概要などを学び3か月間の研修を終えました。木材乾燥では、割れや変色の低減を図りつつ品質とコストとのバランスを取ることが求められます。今回の研修で得た知識・技術を活かし、今後の業務に取り組みたいと考えています。

研修期間中、木材乾燥研究室の皆様には大変お世話になりました。この場を借り、厚くお礼申し上げます。